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安易に使ってない? 「エンゲージメント」と「一体感の醸成」〈後編〉


はじめに

社内報関係者のみなさん、こんにちは。
また、お会いしましたね〜。

前編では、「エンゲージメント」についてざわざわしましたが、
後編では、「一体感」について議論します。もちろん今回も、AI君にちょこっと参戦してもらっていますよ!


一体感は「自然な形で」醸成されるべき by AI漱石センセイ

前田:
「一体感の醸成」って、「エンゲージメントの向上」と同じくらい、テンプレート的に使われるシーンが多いけど、これもなんだかモヤモヤ感があるんですよね。

井上:
「一体感の醸成」ね。あまり気にしていなかった言葉だけど、言われてみれば、社内報のコンクールなどでは応募用紙でよく見かけるね。

前田:
こちらもChatGPT経由で漱石先生に聞いてみたんですけど。

ーーープロンプトーーー
「組織における一体感の醸成」ということを夏目漱石だったら、どう説明すると思いますか?

ChatGPT:
夏目漱石が「組織における一体感の醸成」について語るとすれば、彼は個人の自我を尊重しつつ、自然な調和を重視するだろうと考えられます。
そして、組織内での一体感についても、個々人の自我を抑圧することなく、自然な形で醸成されるべきだと考えたかもしれません。
すなわち、漱石は組織における一体感の醸成を「個々の自立した存在が、自己を超えて自然な形で調和し、他者と共にあること」として捉え、それが最終的に美しい形で組織に反映されるものだと考えたでしょう。

前田:
これ、なかなかいい感じだと思ったんですよね。
特に「組織内での一体感についても、個々人の自我を抑圧することなく、自然な形で醸成されるべきだと考えたかもしれません」というくだり、意外と納得度高かったです。
自然と一体感が生まれる、もしくは、ほっといても一体感が生まれちゃう、というのは自分が考える理想なんですけど、コグレさん、どう思います?

コグレ:
うんうん、これも化学式(前編を参照)にできるかな〜。
RとかPは共通するかも。

三上:
化学式はもういいって〜(笑)。
でも、前田さんがよく言っている「自然」っていうところは、漱石もきっちり言及してくるんですね。

前田:
ですね。
でも、インターナルコミュニケーションにおいては、自然と一体感が生まれる「組織文化の醸成」が先なんだと思います。

「企画書に書いておけば安心」は、ちょっと待て!

前田:
日本と西洋の話で言えば、欧米の企業は、「共通の目標達成に向けた協働」という形での結束感を重視する傾向があるのに対して、日本の企業は「集団意識」や「協調性」に基づいて一体化をとらえる傾向があると思うんです。個々の役割よりも「全体のためにどう貢献するか」が強調される、という感じで。これは現代的ではないし、行き過ぎるとファシズムになってしまう。

「エンゲージメント」とか「一体感」っていう言葉がIC(インターナル・コミュニケーション)担当者から出てきた場合、どれくらいの人たちが根本をちゃんと分かった上で使ってるんだろうか? と。

三上:
企画書に忍ばせておくと、上司を説得しやすいキーワードでもありますよね、それって。とりあえず書いておけば企画が通る、魔法の言葉みたいに。

前田:
そうなんですよね。そういった用途で使われるシーンは多いのでは? と思ってしまいます。
そこのところ、IC担当者の方々にお集まりいただいて、本音を聞いてみたいです。

三上:
社内報づくりで、前田さんの言う「組織文化の醸成」をすっ飛ばして、安易に「エンゲージメントの向上」や「一体感の醸成」を掲げてしまうと、読者である社員たちはおいてけぼり・・・ということになりかねない。そこを意識しないと、ですね。

井上:
前編のエンゲージメントのところで「自分ごと化」と言ったけれど、自分ごと化すると他の人を巻き込みたくなる、というサイクルもありそうですね。それが一体感に結びつく。
NHK番組「魔改造の夜」みたいに、自分から手を挙げて参加するプロジェクトがあれば、チームで解決すること、一体感の醸成など、さまざまな意味を一度に体感することができるかもしれないと今一度思いました。
能動的に動くと納得できる、納得できると一段と能動的になるという好スパイラルが生まれるのでは?
最初は、「なんか面白そう」という軽いモチベーションでも良いので、アクションを起こすところから始まるような気がしています。
中身を紐解いていくと、ダブるところが多いエンゲージメント向上と一体感の醸成ですが、三上さんが言うように「それを社内報でどう扱うのか」「どういう点で、発行目的に挙げられているのか?」が気になるところです。

藤野:
みんなの言ってること、それぞれ納得感がありました。
「一体感を醸成することを目指す」に違和感があるのは、一体感は「目指す」ものじゃなくて、「自然に生まれる」ものじゃないのって感じてるからでは? 目指してできた一体感は気持ち悪くない?、って思ってるっていうか。

井上さんのあげてくれた「魔改造の夜」みたいに、見ているとそこに参加している人たちから伝わってくる一体感だから「いいね!」って思えるわけで。

井上:
「魔改造の夜」は、番組が決めたおもちゃを改造してスピードやジャンプの高さなどを競うのがテーマ。応募企業は、多くが挙手制でメンバーを集めている。技術系・事務系混在だったり、新人をリーダーに抜擢したり。

競技用の製品が作られていく工程を見ていると、すでにチーム内に一体感が生まれてる。アイデアを絞り出すとき、試作が上手くいかないとき、行き詰まったとき、メンバーが助け合い一緒に課題を解決してやっと完成にこぎつける。

本番で予期せぬアクシデントが起こり、失敗して全員が泣いても、悔しさと同時に「チームが一体となっていたんだ」と感じているのがわかる。

他企業チームが失敗したからといって手放しで喜ぶことはなく、むしろ悲しそうな表情の人が多く、「痛いほど気持ちがわかる」といったコメントも。会場全体に一体感が生まれているんだよね。

藤野:
“ざわざわ”のナマ議論では、社内報が「一体感を作ることを目指します」なんて言っちゃうと、「社内報、何さま!?」という気もするよねっていう話も出てたけど、出来上がった記事から一体感が自然に伝わってくる社内報が読み手の心に刺さるのかもしれない。

古川:
そうなんです!
私も10年以上前の話ですが、社内報の発行目的に「一体感の醸成」という言葉を初めて見たとき、本当に驚きました。それを使っていたのは当時20代の担当者で、とても優秀でしっかりした方でした。

でも「社内報で会社の一体感を醸成? 本気でそんなことを目指しているのか?」と、大きなクエスチョンが頭に浮かんだんです。しかし、その後はあちらこちらで「一体感の醸成」という言葉を見たり聞いたり。「ああ、これは社内報担当者の間で流行している言葉なのね…」と思うようになりました。

「一体感の醸成」って理解のない経営陣・上司向けのキラーワードでしかないの?

前田:
自分は以前古川さんからうかがった、その10年以上前のエピソードがずっとモヤモヤしていて、「あぁ、やはり薄っぺらい使われ方がほとんどなんだなぁ」と。

これって、担当者だけの問題ではなく、経営陣や上司も薄っぺらい認識しかしてないことにも大いに問題があるのでは? と思うんです。

ちょっと別目線の話になりますが、クレドってよく耳にしますよね。
組織の一体感醸成にも役立てられるシーンがあると思うのですが。

あれって、経営陣だけでなく現場のメンバーも会議に参加してまとめ上げるケースがほとんどですよね。経営陣だけでクレドを作っても無意味だということで。

でも結局、クレドカードを作って配布して満足して終わりっていうケースが多いように思うのですが、一体感醸成に何の役にも立っていないという…

三上:
クレジットカードなら役立つけど、クレドカードは役立たないのか…

前田:
そうなんですよ〜! って、そうでなくて…

さらに、クレド作成会議のために現場のメンバーに無理を強いることって、実際にあるようで。

本当に酷い目にあった方から聞いた話なのですが・・・その方が勤務していた会社の本社は関西某所にあって、トップが深い考え無しにいきなり「そうだ! クレドを作ろう!」って言い出して、東京の拠点からメンバーを呼んで会議を重ねていったらしいのですが、マネジメントが酷かったんです!

まず、東京のメンバーは関西でのクレド会議に参加する時間を作るために、前日の業務で徹夜を強いられて、それでも作業が出発ギリギリまでかかって、指定席を取っていた新幹線に間に合わず、しかたなく自由席で、ゆっくり座ることもできず関西まで行き、会議に参加して最終に近い新幹線で東京のオフィスに戻り、そのまま再びほぼ徹夜で業務を続けるということに。

クレドが完成するまで、複数回そんな事を強いられたそうです。

三上:
あらー。今だったらオンラインでよかったのにね。

前田:
そう思うんですが、こういった会議は「リアル」派の経営陣は多いようで。
やはり、この事例でもトップは「オンラインは嫌だっ」てことだったようで。

話を聞いた自分としては「え? 会議参加のためのスケジューリングは無しだったの?」と、驚きました。そもそも、トップの単なる思いつきっていうのがまず、アウトなんですが。
まぁ、その会社は他の業務についても、同じくトップの単なる思いつきに皆んなが振り回されて、ほぼそんな感じのマネジメントっていうブラッキーちゃんだったようで。

それにしても、そんなマネジメントって「クレドを作ろう!」以前の問題だと思いますし。

ということで、一体感にまつわる残念な事例を紹介しましたが、そんなんで一体感醸成とかモチベーションアップにつながるとは到底思えないんですよね。
どう思います?

三上:
日頃から経営層の考え方が十分に伝わっている組織なら、社員もトップの思いつきに振り回されているとは思わないだろうけどね。そんな組織には新たなクレドは必要ないのかもしれないし、鶏が先か(略)みたいな話になっちゃいますね。

前田:
そうですね。ここでは、鶏が先か(略)みたいな話なのですが、やはり、根本のところでは「組織カルチャー」の方が先にありきなのかな、と。

井上:
企業が求める一体感とは何なのか。

一体となって物事に取り組むと、個人も通常以上の能力を発揮できる。なぜなら、能動的に参加した者だけが体験できる「自分ごと化」を通し、自分の使命を感じ、責任感ややりがいが生まれるから。企業は、そういう「チームとして高い次元での成功」を期待しているんじゃないかな。

そのためにICとしては何をしていくべきかを考えることが大切。社内報などのツールでできることは何か…

「魔改造の夜」では、苦労して開発したプロセスのドキュメンタリー映像を見ただけで、視聴者も共感できる。そこにヒントがありそうな気がします。

前田:
そうですね。
「魔改造の夜」は大好きでかかさず見てるんですけど、井上さん同様、大きなヒントが隠されていると、自分も思います。
一体感が「勝手に生まれちゃう!」といったようなシーンがほとんどですよね。

三上:
そうそう、共感・共鳴も、そこにはあるよね。

前田:
う〜ん。
「魔改造の夜」で、参加チームに生まれる一体感もある種の美しさを感じたりしますし、やはり、ChatGPTが導き出した漱石先生の考えは納得度が高い印象がありましたね。


まとめ

今さてさて、今回もいかがでしたでしょうか?
「そうそう、私も“一体感の醸成”ってモヤってた!」って思っていたあなた、少しはスッキリしていただけたでしょうか。

やはり、エンゲージメント同様、自然発生的に生まれてくるのが理想なのだと思うのですが、IC担当者の皆さんにおかれましては、その「自然発生的な流れをどう生み出していくのか」というのが大きなテーマになってきそうです。

“ざわざわ”ではこれからも、このようなモヤモヤを「スッキリ!」とはいかないまでも、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

他にもこんなモヤモヤあるけど、それってどうなのよ!」と思ったあなた、メッセージをいただければ、“ざわざわ”でざわざわして参りますので、遠慮なくどうぞ!


この記事について

“ざわざわ”は、ツールの使い方や社内コミュニケーションの最適解を教え合う場ではありません。道具が多少足りなくても、できることはないか?姿勢や考え方のようなものを「実務」と「経営」の両面から語り合い、共有する場です。

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