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安易に使ってない? 「エンゲージメント」と「一体感の醸成」〈前編〉


はじめに

社内報関係者のみなさん、こんにちは。
ここ数年、社内報の発行目的や特集企画の目的として「エンゲージメントの向上」や「一体感の醸成」を挙げる企業がとても多くなっています。
でも、みなさんは、これらの概念をきちんと説明できるでしょうか。

そもそも、「エンゲージメント」ってどういう意味?
どういう状態になっていれば、「一体感がある」と言えるの?

“ざわざわ”メンバーの私たち自身も、ちょっとアヤシイ(かもしれない)。

そこで、今回はオンラインでの議論を踏まえ、誌上でさらに補完するべく「誌上ざわざわ」を開催してみました。2回にわたり、「エンゲージメント」と「一体感」について議論します。

前編は、「エンゲージメント」について。ざわざわ初、AI君も参戦していますよ!


経営者と従業員では目線が異なる? 「エンゲージメント」

三上:
今日は、「エンゲージメント」や「一体感の醸成」について、誌上でざわざわしてみましょう。私たちは企業の社内報に関わる仕事をしていますが、社内報の発行目的や特集企画の目的などを担当者に聞くと、この二つの言葉を挙げられることが多いですよね。

ただ、実際にその企業の社内報を拝見すると、どうもそこに結びついているとは思えないものも少なくありません。そもそもこれらの言葉の定義もあいまいで、イメージするものは人それぞれに違っていたりするような気もします。そのあたり、一度整理してみたいと思って。じゃまず、エンゲージメントから。

エンゲージメントって、よく「絆」とか「愛着」「愛社精神」なんて説明されますよね。私はどうもこれがしっくりこないんです。コレジャナイ感があって。そもそも、「ワーク・エンゲージメント」とか「従業員エンゲージメント」とか、いろんな言葉が出回ってますよね。私にとって、「自分が仕事に対して愛着を持っている」というワーク・エンゲージメントは分かりやすいんだけど、「従業員エンゲージメント」って誰が誰(何)に対してエンゲージメントを感じるのかもよくわからない。ざわ〜ズのみんなはどうですか?

コグレ:
たしかに「エンゲージメント」と一口に言っても、経営者は業績の向上を重視する半面、従業員は長期的なキャリアの成長や個人的な満足感を重視する傾向があり、お互いの期待と現実にギャップがあるように感じます。インターナル・コミュニケーションを語る上では、「エンゲージメントを上げよう!」とひとくくりで表すのは難しいように感じます。

漱石センセイだったら「エンゲージメント」を何と訳す?

コグレ:
「エンゲージメント」は輸入された言葉ですよね。でも、そもそも「和を以て貴しとなす」のように、社会や組織における調和や協力を重視する価値観は、日本人の文化的背景に深く根付いているようにも思うんです。日本にはそもそもエンゲージメントがあったと言えませんか?

三上:
それはずいぶん極論ね!
でもでも例えば、江戸時代の人に説明するとしたらどう説明するかしら?

コグレ:
それは面白いですね。ChatGPtにきいてみましょう!
・・・・
「商慣行における長期的な関係性を重視」「集団の和や協調性の重視」「おもてなしの心」「家の概念」「義理人情」だそうです。
わからなくもないのですが、なんかしっくり来ないですね。株式会社があった明治時代の場合をきいてみましょう。
・・・
「得意先懐柔」「社員忠誠」「互恵共栄」「商道徳の実践」などを統合して「商売の絆」ではどうでしょう?とのことです。

三上:
結局、「絆」になっちゃうのね。なんか、つまんないなー。もっと言葉のプロフェッショナルな人だったら、どんな説明するのかな? 西洋にも精通していて・・・英語に詳しくて・・・夏目漱石だったら?どう?

コグレ:
おもしろいですね。訊いてみましょう!

ーーープロンプトーーー
ビジネス用語のエンゲージメントを夏目漱石が訳したらなんという言葉、もしくは説明をすると思いますか?

ChatGPT:
夏目漱石が「ビジネスエンゲージメント」を訳すとしたら、彼の文学的才能と西洋文化への深い理解を活かし、日本の伝統的な概念と西洋の新しい考え方を融合させた表現を生み出すでしょう。

想定される訳語:「商況交感」(しょうきょうこうかん)

「商況交感とは、商売に携わる者たちの心が波のごとく寄せては返す様を言うのである。 客の心と商人の心とが、まるで月の引力に従う潮のごとく、互いに引き合い、響き合う。 されど、この交感は単なる感情の交流に留まらず、双方の利益という大地を潤す雨となって降り注ぐのだ。
社中にありては、主と従とが藤蔓の絡まるが如く、互いの存在を支え合う。 この絆は、単なる義務や命令にあらず、心底からの共鳴であり、会社という一つの小宇宙における調和なのである。
西洋の新奇なる概念とはいえ、その本質は我が国古来の「情け」の精神と通ずるものがある。 ただし、現代の商況交感は、感傷に溺れることなく、理性の光に照らされた、より洗練された情の交わりを意味するのだ。
この概念を真に理解し実践する者こそが、新時代の商売において、燦然と輝く存在となるであろう。」

三上:
へえ、「会社という小宇宙における調和」ですって! やるじゃんAI(笑)。「我が国古来の『情け』の精神と通ずるものがある」っていうのは、コグレさんの指摘にも似ている。

組織と個人の共鳴²+αの恋愛模様

三上:
でも、漱石センセイの説明、長いねー。もっと簡潔に表現できないのかね。

コグレ:
やっぱり、ひと言で表現するのは難しそうですね。
共鳴とか信頼関係とかの要素が、複合的に合わさっての「エンゲージメント」なんですものね。

三上:
ん? それって化学式で表せそう!

コグレ:
なるほど!

要素としては、「心底からの共鳴」、関係者との「信頼関係」、義務や命令でない「参画意識」、あとは「情」なのですが、どちらかというと「熱意」かもしれませんね。
書き出すと、

E (Engagement) = エンゲージメント
R (共鳴) = 深い共鳴(resonate deeply)を表す要素
     共感(empathy, sympathy)を超えた、深いレベルでの同調や感動
T (信頼関係) = Trust(信頼関係)の要素
P (参画意識) = Participation(参画意識)の要素
H (熱意) = 熱意ややる気を表す要素

だから、共鳴強めに
E = R2TPH
ではどうでしょう?

三上:
よけい意味わかんなくなった(苦笑

古川:
私はこの数式、結構はまったかも!
これまで「エンゲージメント=帰属意識」って解釈してたけど、確かに三上さんがいうように「従業員エンゲージメントってナニ?」ですよね。私の解釈では、ワークエンゲージメントの先にある気持ち。「この組織で働けることが幸せだ」とか「この組織にもっと貢献したい」って自発的に思えること。そんな風に思う従業員が多くいると、会社側から見て「従業員エンゲージメントが高い」っていえるんですかね。違うかな?

コグレ:
おっしゃるように従業員エンゲージメントは帰属意識以上のものだし、ワークエンゲージメントの先にある心理状態だと言えると思いますよ。
化学式 E = R2TPHに立ち返ると
R2という組織の理念と個人の価値観の深い共鳴(R)がまずあって(しかも二乗するほど重要)、安心して働ける(信頼しあえる)環境(T)があって、命令でなく主体的に参画(P)し、仕事やゴールに向かった熱意(H)であり、外から見たらある種の恋愛状態にもみえるかもしれませんね。

三上:
恋愛状態かは人によるかと思うけどね。

能動的に参加できる「場」がエンゲージメントを育む

藤野:
昔から工場なんかでは運動会とかのイベントをたくさんやって、会社がそのお金を出していたよね。チャップリンの『モダンタイムス』を持ち出すまでもなく、工場で働く人って部品化しやすいじゃない?自分が辞めてもすぐ他の人で代替される、自分じゃなくてもいいじゃんって感覚があるとエンゲージメントは持ちにくい。だから「あなただからこそ必要なんです!」っていう舞台を作るためにイベントをやる。運動会、QCサークル発表会、提案表彰とか、今でもやってる企業は多くて、社内報にも取り上げられるでしょ。

これは上の化学式では「P」の参画意識だよね。従業員に、自分はちゃんと参画していて、それは自分じゃなくちゃだめなんだ感を持たせようとしてる。Pが上がれば、TもHも一緒に爆上がりするでしょっていう目論見があって、時間もお金もかけてこういうイベントをやり続けているんだろうなあと思う。

従業員の承認欲求を満たすことでWork Engagementを高めようという感じ?

三上:
「人は、自分が能動的に取り組めるものには愛着を持つ」って言いますもんね。反対に、「自分じゃなくてもいい」とか「自分にはどうにもならない」モノやコトには愛着を持てない。

 いずれにしても、言葉の定義があいまいなまま、社内報の企画の目的を判で押したように「エンゲージメントの向上」としてしまうのは危険じゃないかなぁ。

井上:
「そもそもエンゲージメントとは」ってあらためて考えると、どんどん新たな課題が見えてくるような気がします。「どうしたらエンゲージメントが上がるのか」や「エンゲージメントが上がるとなぜ良いのか」など。
「任せられると愛着を持つ」というのは、とても共感します。でも、どんな施策を打っても、2:8の法則みたいに変わる人、変わらない人がいて、なかなか100%達成したり、その愛着を持続するのは難しい。だから、次から次へと新しいコンサルテクニックが考えられるのではと、、、
「能動的に動くと自分ごと化できる」という視点も素晴らしい。大事なのは、従業員が自分ごと化を意識できたときに、能動的に参加できる「場」があることではないか?と想像します。


まとめ

今回の「誌上ざわざわ」、いかがでしたか?
「そうそう私もエンゲージメントってモヤってた!」って思っていたあなた、少しはスッキリしていただけたでしょうか。

要するに、エンゲージメントとは、上から一方的に押し付けるものじゃなく、社員のみんなが能動的に取り組めるコトや場を通じて自然に生まれてくるものなのではないか。それを私たちざわ〜ズメンバーそれぞれが感じていたのでしょう。

みなさんの職場でも、こういうことを話し合う場を設けてみるのも、いいかもしれませんね。

次回は、「エンゲージメント」と同じ文脈で語られることの多い「一体感の醸成」について、ざわざわします。ますますカゲキになる(?)ざわ〜ズの誌上ざわざわ、必見ですよ!


この記事について

“ざわざわ”は、ツールの使い方や社内コミュニケーションの最適解を教え合う場ではありません。道具が多少足りなくても、できることはないか?姿勢や考え方のようなものを「実務」と「経営」の両面から語り合い、共有する場です。

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