金魚の見た夢
東京都の府中にある大國魂神社では、4年ぶりにくらやみ祭りが開催された。4月の30日から5月の6日まで行われる大祭(一部非公開)であり、近隣に住む人ならば楽しみにしている行事のひとつだ。
お神輿も出るし、日本最大級の大太鼓の饗宴、競馬式(こまくらべ)、日によって行われる行事が違う。我が家が訪れるのは大抵、大太鼓の饗宴が行われる5月4日。神社の縁道や駐車場に出店がひしめき合って賑やかだ。まだ、少し早めの浴衣を着た子、ちょっと前に流行っていると話題になったジュースや食べ物。あちこちから漂う食欲を唆る香り。お化け屋敷のおばちゃんの呼び込み。流行りのモノを扱う籤引きに子どもたちが夢中になっている射的。橙色や何処かぼやっとした白い灯りのもと、売られているモノが宝もののようにきらきらと揺らめいて不思議な感覚になる。大体、出店というのか、お店が出ているのは同じ場所、同じ人であって何度か行くと「ああ、去年もここで買ったわ」となる。それがコロナ禍前。あのウィルスが世間に蔓延してから、くらやみ祭りは神職のみでの開催、昨年は出店の規模を縮小して行われ、やっと4年ぶりに元どおりに開催されている。
楽しみにしていた出店があった。
飴細工屋さん。
おっちゃんが色々と説明しながら作ってくれる、それは人混みの中細心の注意を払って家へ持ち帰り、リビングに飾られる。
おっちゃんは、軽快に話し、時に飴細工を作る手元を撮ろうとする人々にやめてくれと牽制しつつも真剣な眼差しで作られる金魚、白鳥、馬などなど。白く柔らかな飴が灯りでてりてりと輝いて創られる繊細な世界。
今年、いつもならばおっちゃんがいた場所へ行ってみたら隣のベビーカステラ屋さんはあったのに、オシャレな箸巻きのお店になっていた。
今年は優雅に舞う金魚を作って貰おうかと思っていたが再会ならず。夢の金魚に終わった。
前にゴジラを作って貰った時に映画の撮影所で見たというゴジラの話をもっと聞きたかった。
来年こそは再会できるだろうか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?