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雑木林が暮らしの座標軸       ~混ざって暮らす、いつも未完成~

幼い子どもが通うようちえんと高齢者の施設で日々現場にいると、
幼い子どもと保護者と保育者、高齢者のご家族、介護者、
そしてボランティアのみなさん。
それぞれの思いがどうしてもぶつかったり、
折り合いがつかずもめることが多かった。
どちらの言い分もわかるから、
ジャッジをすることはとても難しいと悩む日々の連続だった。

言いたいこと


ある日、幼稚園をのぞいてみると、
子どもたちがムカデをつついて大騒ぎ。
興奮冷めやらぬ子どもたちに、
「さぁ、ぞうさん、うたうよ~」と
先生がピアノを弾き始めていた。

その様子を見て、先生と話し合った。
「子どもが今、あんなに目を輝かせてまだムカデの話をしているのに、
なんでぞうさん?ムカデの歌はないのかな?
歌じゃなくてもムカデの話をしてもいいんじゃないかな」
目の前の子どもたちの「今」に寄り添ってほしい。
その一心で、先生たちにもわかってもらえるように何度もお願いした。

大丈夫かえ?

またある日、高齢者施設の職員が別の職員のことを怒っていた。
「おむつ交換に時間がかかりすぎて、まったく間に合わないから、
引き継いだ職員がそのあと全部を引き受けておむつ交換しなきゃならないんですよ」
 ところが、ゆっくりとおむつ交換をしている職員は高齢者には大人気。
なぜなら、おむつ交換はモタモタだけど、
ずっと高齢者の話をニコニコと聴いているかららしい。
さっさとおむつを交換して、
用事がすめばゆっくり話しをすることもなく立ち去ってしまう職員と
モタモタしていてもニコニコと話を聴いてくれる職員。
どちらもいいんだと伝えると、
さっさとできる職員が「やってられない」と
怒って辞めてしまった。
 
両者の間に立つと
どちらの言い分も気持ちもわかるだけに、
どうすればよいのか難しくて本当に悩んだ。
そこで、何か問題が起こるたびに、
その両者を並べて整理してみた。
幼い子と先生。ムカデとぞうさん。
高齢者と職員。
おむつ交換と会話。
両者ならべていくと
どちらがいいとか悪いとかではなく、
そもそも両者はまったく異なる人に見えてきた。


その異なる人の特徴を表にまとめたものが
「デコボコ道・・・
【時間に追われる国と時間に追われない国】だ。
真逆の価値観をもつそれぞれの国にいる人々を表すことで、
お互いを知るための第一歩になることを願い話し続けている。
早くできる人は早くやればいいし、
ゆっくりの人はゆっくりでいい。
お互いのスピードややり方を受け入れる
おおらかさを持つことはできないだろうか。


例えば、早くおむつを替えられる人は、
心乱れることなく早くできる自分をもっと楽しめないか。
会話ができる人の特性をもっと活かすことで
高齢者がさびしくない暮らしができるなら、
モタモタをもう少しスムーズにする努力もしつつ
高齢者のためにお互いに工夫ができないか。
する側ではなくされる側の立場に立って考えてみる。
高齢者にとってはおむつを替えられることも、
話をしたり聴いたりすることも、
両方とも同じように暮らしの中にある時間なのだ。

ふと立ち止まる

すべてを一人で請け負うことには限界がある。
向き合う相手がいて、その相手のためにどうするか。
それぞれ懸命に頑張っているのだから、
怒って責めて傷つけあうのではなく、
その違いを知ることで折り合いがつくことはないだろうか。
どんなに異なる価値観を持つ人同士でも、
活かしあって
一緒に暮らしていくための心の持ちようはないだろうか。
 多種多様な生命が循環する雑木林を見ていると、
異なる両者の国が共にいきられるのではないかと思うようになり、
「雑木林が暮らしの座標軸」とした。

雑木林は常に変化していくから完成することはない。
「いつも未完成」であることを、
おおらかな心持ちで認めあうためのキーワードは

「ほどほど、だいたい、まぁまぁ、適当」


おいおい


世の中がどんなに便利になっても、
忙しいと思う人は忙しいし、暇だと思う人は暇だ。
楽しいと感じる、つらいと感じる、
何も感じないという人もいるだろう。
自分と違う感じ方をする人を切り捨てるのではなく、
両者抱えあって進めるか。
自分を知り、相手を知る。


今、自分がどちら側にいて、
どんな気持ちでいるのかを確認するためにも
デコボコ道・・・「時間に追われる国と時間に追われない国」を
よくよく見てほしい。
互いに歩み寄るために、自分と向き合うことはとても大切だ。
人は一人では生きていけない。
一人で生きようなんて強くなろうとしなくていい。
困ったときに「助けて」と言える勇気だけ忘れないでほしい。
そして、皆で助け合える人になってほしいと願う。
何度でも何度でも、何歳になっても、振出しに戻ってみればいい。


デコボコ道…「時間に追われる国と追われない国」


みんなで力をあわせて

今日はこの辺で。
お付き合いいただきありがとうございました。

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