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「古時計」と「白い髭」

娘が幼稚園で覚えてきた「古時計」の歌をよく口ずさんでいます。
年長さんだけど、周りの子に比べ、言葉の覚えが遅く、所々の歌詞はメチャクチャで、メロディも調子っぱずれ。
だけど、幼い声で切なく歌ってるのが、愛おしく、何度もリクエストしてしまいます。

そんなある日、娘と家で遊んでる時に、娘が私の顔をじっと見て、
「パパ、お髭のココ白になってる」
と言って、白い毛が目立つ様になってきた私の無精髭をジョリジョリ触ってきました。

「パパはもう、おじいちゃんになっちゃうんだよ」

と、冗談半分に言うと、
「パパはおじいちゃんじゃない!パパ大好きだから、髭とって!」
と、娘。

さらに私が、
「ほら、頭の髪にも白いのあるでしょ?パパはどんどんおじいちゃんになるんだよ。」
と、たたみ掛けると、

「ママに白の髪切ってしてもらうの!ママに言ってくる!」
と言って、キッチンに走っていき、料理をするママに一生懸命、髭と髪の事を説明しだしました。

娘の説明が「???」だった奥さんは、何度も聞き返しますが、娘はまだ上手く伝えられる語力がありません。
私が助太刀に向かうと、娘は涙目になっていました。

私が抱き上げて
「パパに白い髪あっても大丈夫でしょ?」
と、言うと娘は
「駄目!取って!パパ大好きだから取らないと駄目!」
と言って、本格的に泣き出してしまいました。

「解ったよ、今お髭とってくるよ」
と言って、あわてて髭を剃って娘に見せました。
「これで大丈夫?」
と聞くと、頷きながら
「パパはおじいちゃんじゃないね。わかった?」
と言って、ワンワン泣きながら抱きついてきました。
私も、笑いながら嬉しくて泣いていました。

この子が思春期に入る頃には私は60を過ぎてます。
名実ともに完全なるおじいちゃん。
白髪だけでなく頭髪も薄くなってるでしょう。
こんな風に泣いてくれるのは今のウチだけなんだろうとは思いますが、とても嬉しくて幸せな気持ちになりました。

そんな気持ちの余韻に浸っている時、娘が「おじいちゃん」という言葉に敏感に反応したのが、「古時計」の歌が理由だと、ふと気づきました。

おじいさんの時計。いまはもう動かない。
天国に昇るおじいさん、時計ともお別れ。

そんな歌詞で「おじいちゃん=いなくなってしまう」となったんだと。

そうか・・・。

私の父も母も、娘が産まれる前に他界しています。
カミさんの父親はカミさんが幼い頃に他界しており、母親とは絶縁状態。
尚且つ、カミさんは中国出身。親戚は皆中国にいるので、娘と逢った事がありません。

要は、親族のおじいちゃんもおばあちゃんも居ません。
だから、逢った事がない。
挨拶程度の付き合いしかない近所のおばあちゃん等位しか娘は知りません。

だから、「古時計」の歌で受けた印象というのがとても強かったんだと思います。

大丈夫だよ。
いつかパパを毛嫌いする様な日がきても、ずっと守ってあげるよ。
心配して、泣いてくれてありがとう。

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