手放しで好きと言えなくなった
ハロウィンが終わりを告げた。つまり11月の到来である。
もう今年も2ヶ月しかないのか……と信じられない気持ちで街に出たところ、もはや1ヶ月しかないかのような雰囲気に染まり始めていた。
――Merry Christmas.
ホリデーシーズンの始まりである。
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スターバックスの新作がマカダミアとホワイトチョコの白いドリンクなのはTwitterで把握していたが、クリスマス仕様のグッズや紙コップも今日から開始なのは実際に店を目にして初めて知った。
赤や白のカラーリング、クリスマスらしい模様を思いがけず一身に浴び、私の心は浮足立った。しかし、それからほんの少し遅れて、胸がキュッと締まっていくような感覚も覚えた。
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書店をぶらついていると、ついこの前までかぼちゃだらけだった絵本コーナーの一角がサンタさんで溢れていた。
クリスマスの絵本、大好き。10月はかぼちゃフィーバーに浮かれ、「1年で1番好きなイベント、クリスマスじゃなくてハロウィンかも?」と思っていた。しかし赤に緑、白の配色や、表紙から滲み出てくる”温かさ”を感じるうち、またしても心がじわじわと動いていくのを感じた。
小さい頃に読んだ、猫がサンタさんのポケットに入る絵本好きだったよな……などと思い出す。そこから芋づる式に、温もりや煌めきで満たされた断片が、ぼわん、ぼわんと浮かんできた。
家族と食卓を囲んだクリスマスの夜、プレゼントにもらったピンク色の掃除機、港の巨大なクリスマスツリー、極寒のなかすすった熱々のポタージュ。
そこから時代は下って、
赤やゴールドで装飾された駅ビル、アトリウム内の巨大なクリスマスツリー、極寒のなかちびちび飲んだホットワイン。
楽しかった思い出の蓄積とは大したもので、結局1番心動くのはクリスマスなんだなあ、と小さく頷いた。
しかしそれと同時に、再び胸がキュッと締まった。
心躍って小刻みに揺れていたはずが、摩擦になってチリチリ痛み始める。
さっきまでときめいていたのに。いや、ときめいていたからこそ、その反動も大きかったのかもしれない。
空気を吸い込み、肩が下がるほど息を吐いた。