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『パーラー・ボーイ君』Vol.2「ビーフ・チキン君、夢を見る」前編
パーラー・タウン1の悪ガキと言えば、ビーフ・チキン君です。
彼は年下の子をいじめたり、女の子の髪にガムをくっ付けたり、スーパーの試食を全部食べたりやりたい放題です。
今日もビーフ・チキン君はハラルド君のことを捕まえて、
「サンタクロースなんて本当は居ないんだい!」
とハラルド君の夢を壊そうと必死に言って聞かせます。
それを見つけたラロッカちゃんが、
「おやめなさい、このゲス野郎! サンタは居るのよ!!」
と、割って入ります。
「うるせぇ、このアマ! サンタクロースなんていうのは、せちがらい消費社会が作り出した一抹の幻想にすぎないのさッ!」
そう言い捨てると、ビーフ・チキン君はツバを吐いて走り去りました。
ビーフ・チキン君の心がすさんでいるのも仕方ありません。悪いのはビーフ・チキン君ではなく彼の育った家庭環境に問題があるのです。
ビーフ・チキン君のお父さんは、ベースーボールで一旗あげることを夢みてキューバから亡命してきた移民ですが、志しなかばでケガをしてしまい、選手生命を絶たれてしまいました。
深い挫折感をまぎらわす為におぼえたお酒がいつしか辞められなくなり、今では毎日あびるほど飲むようになってしまいました。
ビーフ・チキン君のお母さんは、働かないお父さんの代わりに毎日、朝早くから夜中まで働いて家計を支えています。
しかし、忙しさからくるストレス、日々の生活への不満、「私だってネイルケアとかしたいのよ」という、まだ女として終わりたくないジレンマなどのせいで、ついイライラしてしまい、ビーフ・チキン君と顔を合わせても、いつもブリブリ怒ってしまいます。
今日も夕方に、ビーフ・チキン君が町外れのモーターホームに止めてあるトレーラーハウスに帰っても、お母さんは、まだパートからもどっておらず、お父さんはすでに酔いつぶれてボロボロのソファーで寝ています。
ビーフ・チキン君は、なれた手つきでフライパンを火にかけると、背がとどかないのでイスにのっかって玉子を落とし、目玉焼きを作りました。
そこへ、ビーフ家と同じようにトレーラーハウスで暮らすウインター夫妻の奥さんがアップルパイのおすそわけを持ってやってきました。
ウインター夫人は自分でディナーの用意をしているビーフ・チキン君を見て、
「いつもえらいわね~」と感心します。そして、
「よかったら、ウチに夕食たべに来ない?」
と、さそってくれますが、ビーフ・チキン君はお腹をだして寝ているお父さんを見て、
「パパが起きた時にオレがいないと心配するからダメだよ」
と断りました。
こんな環境で生活するビーフ・チキン君には、パーラー・ボーイ君たちと同じように屈託なくX,masを待ちわびることなど出来ません。
(つづく)