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『パーラー・ボーイ君とクマ』
ハロウィンの日の出来事です。ジャック・オー・ランタンを作るためのカボチャをもらうため、パーラー・ボーイ君とパパが車でファーマーさんちの畑をたずねて行くと、めちゃくちゃに荒らされた畑の前で、ファーマーさんが“トホホッ”と立ち尽くしていました。
聞くと、お腹をすかせたクマが山から降りてきて、畑の作物を食べていってしまったそうです。
そのせいで、カボチャは全滅です。これにはパーラー・パパも、
「ハロウィンに使うカボチャは、毎年ファーマーさんに分けてもらっていたんだけど・・・・・・これじゃしょうがないか」
とガックシです。
しかたがないので、パパとパーラー・ボーイ君はスーパーマーケットまでカボチャを買いに行きました。
スーパーマーケットでは、店先に特売品のカボチャを山積みにして売っています。
しかし、パパが駐車場に車を止めている間に、なんとここにもクマがやって来て、すごい勢いでカボチャの山に突っ込むと、バリボリとカボチャを食べ始めてしまいました。
販売員や、周りに居たお客さん達は、悲鳴を上げて逃げ出しましたが、パーラー・ボーイ君は車の中から様子を見て、
“すごい、すごーい!”と大喜びです。
パパはその横で、
「も~、クマが全部食べちゃって、カボチャ買えなくなったらどうしよ~」
と相変わらずの、のんき者発言です。
しばらくすると、通報を受けた警察や狩猟愛好家たちが駆けつけてきて、クマに向かって発砲しはじめました。
猟銃や散弾銃、リボルバーから次々とくりだされる弾丸の嵐。これには、さすがのクマも、
“おっかな~い”
と逃げまどいますが、その両手には、ちゃっかりとカボチャを抱えています。
パーラー・ボーイ君はクマを助けてあげようと、
「クマ! こっちだ!!」
と車のトビラを開け、右往左往するクマのことを中に入れてあげました。
クマが、
「助けて、はやくどっか逃げて~ん」
と泣きつきますが、パパはクマが両手に抱えたカボチャを見て、
「どっちか一個くれるならいいよ」
と、ここでも変わらずの、のんき者発言です。
クマが、
「助けてくれたら、ふたつともあげるよ~ん」
と言うと、
「ほいきた!」
とパパはアクセルを踏み込んで、車に向かって鉛の塊を打ち込んでくるハンターたちの事を蹴散らしながら、スーパーマーケットから走り去りました。
パパは最初、山まで行って、そこでクマのことを降ろそうとしましたが、見るとクマは、二の腕から出血しています。
「クマ! ケガしてるじゃないか!!」
パパに言われると、クマはテレくさそうに、
「うっかり、流れ弾に当たっちゃった」
と頭をかきました。
「なんでもっと早く言わないんだよ、ほっといたら大変なことになるぞ!」
そう言うと、パパはクマのことを自分の家に連れて帰りました。
家でキズの手当てをしてもらったクマは、
「なにからなにまでお世話になって、かたじけない。今のオイラに出来る事といったら、このカボチャを差し上げることぐらいですが、受けたご恩は一生忘れません」
とお礼を言い、持っていたカボチャをふたつとも、パパに渡して出て行こうとしましたが、パーラー・ボーイ君が、
「クマー! 一緒にジャック・オー・ランタン作ろうよー!」
と足にしがみついて引き止めます。
クマは、
「でも、オイラは獰猛な肉食動物だし、全身毛むくじゃらでノミだらけだし」
と遠慮しますが、パーラー・ボーイ君は「それでもいいから」と引き止め、パーラー・パパもママも、「ゆっくりしていったらいいさ」と言ってくれるので、クマは「それならお言葉にあまえて」と、その日は、パーラー・ボーイ君と一緒にカボチャをくり抜いたり、おやつを食べたりしながらのんびりとすごしました。
気づけばもう、夕暮れ前です。パーラー家に仮装したハラルド君とラロッカちゃんがやって来ました。
「パーラー・ボーイ君、お菓子もらいに行こー」
「着がえてくるから、それまでの間、クマと遊んで待ってて」
そう言って、パーラー・ボーイ君は二階に上がって行きました。
やって来た2人は、クマを見てビックリです。
「すご~い。本物のクマだー!」
こわいもの知らずのラロッカちゃんは、クマにさわったり、乗ったり、つまんだり、大はしゃぎ。ハラルド君も恐る恐るではありますが、クマとのコミュニケーションをこころみます。
パーラー・ボーイ君が着替えて下りてきたころには、二人もすっかりクマと仲良しです。
「クマも一緒にお菓子もらいに行こうよー」
三人はクマの手を引いて近所の家々を周りました。
マクローリンさんとこの、おばあさんは、クマを見て、「よくできた衣装ね」と感心して、他の子達にあげるよりも多くお菓子をくれましたし、カーターさんとこのオジサンは、「一緒に記念写真とろうよ」とカメラを引っぱり出してきました。
それに、ホーマンさん家は、いつもうるさく吠える恐い犬がいるので、子どもたちは玄関までたどり着けないのですが、この日はクマが、
“ガオーッ!”
とうなり声をあげると、犬は、
“クイン、クイーン”
とシッポを巻いておとなしくなったので、パーラー・ボーイ君たちは、この辺りの子どもたちの中では、初めてホーマンさんからお菓子をもらうことが出来ました。
ヘンクツ者で有名なライザーさんは、「Tric or treat」の合言葉を無視して、ドアを“バタン!”と冷たくしめます。
パーラー・ボーイ君たちがもう一度声をあわせて「Tric or treat」と言っても返事がありません。
「・・・・・・」
みんなが諦めて、次に行こうと思ったときに、クマが大きな声で言いました。
「イタズラだー!!」
クマが大きく上に挙げた手を、トビラに振り下ろすと、ライザーさんちのトビラは、“バターン!”とキレイに外れてしまいました。
驚くライザーさんの姿を見て、パーラー・ボーイ君たちは、“キャッキャ、キャッキャ”わらいながら走って逃げました。
これに味をしめたクマは大はしゃぎ。お菓子をくれない人の家のまえには、脱糞したり、花壇の花を食べたり、やりたいほうだいです。
あげくの果てには、もらったお菓子をつまみ食いして、
「のどが渇いた~」
と言うラロッカちゃんの為に、自動販売機に突進してぶち壊し、中のジュースをザックリと取り出したりしました。
子どもたちは、「すごい、すごーい」と無邪気に大はしゃぎです。
お菓子も沢山手に入れて、イタズラもさんざん楽しんだ、三人とクマは別れぎわ、
「明日も一緒に遊ぼうね」
と約束しました。
バイバイと手を振って、山に帰っていくクマに向かって、パーラー・ボーイ君はもう一度、大きな声で、
「クマー、また明日も一緒に遊ぼうねー! 約束だよー!!」
と声をかけました。クマも、
「遊ぼうねー」
と大きく手を振りました。
その日、ねぐらに帰ったクマが、寝っ転がりながら、パーラー・ボーイ君たちと分けっこしたお菓子を、ポリポリかじっていると、ジンワリと睡魔がおそってきました。
(あっ、これはいつもの眠たい感じと違うな~ぁ)
クマは冬眠の時期がやって来たことをさとり、だんだんと遠くなってゆく意識のなかで思いました。
(約束まもれなくてごめんね、パーラー・ボーイ君。オイラ、あした一緒に遊べそうにないや。・・・・・・春になったら、また一緒にあそんでね・・・・・・zzz)