ダリッジ小屋騒動とUXデザイン
少し前、イギリスで嘘のレビューをもとに実在しないレストランがトリップアドバイザーで1位を取る、という騒動がありました。騒動の詳しい顛末はよそに回すとして、つまりは嘘の情報でみんなが騙された話です。
この騒動はフェイクニュースの事例とその危険性としての意味合いが強いですが、少し違った角度から見てみます。
実際にお客さんを呼ぶ
騒動の終盤、話題になった実在しないレストランは実際にお客さんを呼んでみることにします。それっぽく店に飾り付けをし、サクラの客を入れ、実際に料理も提供します。ただし料理はスーパーで買ってきた安物です。
そんなレンチン料理だったりするのですが、意外にもお客さんには好評だったようです。
雰囲気をデザインする
なぜ好評だったかといえば、事前の「トリップアドバイザー1位」というバイアスと雰囲気のせいではないでしょうか。ここではお客さんが味オンチだとかという批判しません。「雰囲気」に注目してみます。
この騒動は極端にしても、多かれ少なかれ私たちは雰囲気に左右されます。ラーメンも一見小汚い店の方が美味しい、みたいな話もあるように、雰囲気バイアスは強くかかっていると思います。
いつもの食事でもお外で食べたり、おしゃれな食器で食べたりすると美味しく感じられるでしょう。個人的にはプッチンプリンもカップのまま食べるより、プッチンしてお皿に出して食べたほうが美味しく感じられます(もちろん、取り出すとカラメルが上にくるという、食べ方の変化のせいもあるかもしれませんが)。
つまり雰囲気をデザインすることだけでも体験を向上させます。
体験のデザイン
この騒動の発起人、ウーバー・バトラーさんは雰囲気のデザイン、もう少し広く体験のデザインを上手くやったのだと思います。なかなか予約の取れない口コミ1位、秘密の場所、非日常的なレストラン。これらの体験がお客さんを満足させたのです。
口コミやレストランの前情報は嘘ですが、お客さんが体験したものは紛れもない事実です。ここでの満足度は料理の美味さだけでなく、料理を食べる一連の体験によるものですから、料理の味を除いて嘘情報に違わない体験をすることができれば評価が高いのも納得がいきます。
逆にここの体験のデザインを失敗していれば、評価が下がり、あるいは嘘がバレてしまったかもしれません。
ここから導き出されるのは、そこで食事をするという体験です。むしろその体験のほうが料理の味よりも重要度は高くなっています。
この一件は体験のデザイン、つまりUXデザインが満足度を左右する良い騒動と見ると面白いのではないでしょうか。