『隙間産業を狙うべきか?』(Is it always better to pick a niche market?)
この問に「絶対に狙うべき」と答えれば言い過ぎでしょうが、Appleならニッチ市場とIT市場全体のどちらを狙うか考えてみましょう。
ビジネスフォンに特化するのか、スマートフォン市場全体を狙うのか。先人の後知恵を参考に言うと、この質問は的外れです。ビル・ゲイツに「IBMの試作コンピュータ用の限定的なOSを作りたいですか?それとも業界一のOSやソフトウェアを作りたいですか」と聞く人はいません。
実社会では、考える方向性が少し違います。「これは面白いだろうか」とか「もっといいやり方はないか」とか「暮らしをもっと便利にする方法は?」など検討します。そうやって開発すると「ウケる」商品ができるのです。
PCは当初一部の愛好家向けに開発されました。ニッチ市場の製品だったPCですが、表計算ソフトが開発されて会計書類を作るのに大変便利だということになりました。こうして経理担当者の間に製品が広まっていったのです。次にワープロのソフトが開発されるとDTPに使われ始めたのです。徐々に経理やグラフィックデザイン、DTPへと応用範囲が広がり、気付いたら大勢が使うようになっていた、それがAppleのコンピュータなのです。
ジェフリー・ムーアはこの現象を分析して「ボーリング・レーン戦略」と名付けました。ストライクを出して高得点を得るにはピンを1本ずつ倒さなければなりません。全部同時には当てられないので、1つずつ倒す必要があるのです。ピンを1本ずつ倒していけば、気付いた時には10本全部倒れている。そしてトップに立つのです。