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【高校サッカー兵庫県決勝】序盤のハプニングにも屈せず。組織力発揮の滝川第二が3年ぶり22度目の優勝!
勝者と敗者に分けるのがもったいない。
そう思える、好ゲームであり、“死闘”だった。
11月10日の正午過ぎ、ここ数日の冷え込みが嘘だったかのような、穏やかな風が吹くサッカー日和。神戸総合運動公園ユニバー記念競技場にて、第103回全国高校サッカー選手権大会・兵庫県大会決勝、滝川第二高等学校とAIE国際高等学校による一戦が行われた。
試合前、強豪校らしいブラスバンドを中心とした大応援団により雰囲気を作り出す滝川第二陣営。一方、初優勝を狙うAIE国際陣営は選手応援のみではあるものの、凄まじい一人一人の声量によって劣らない迫力を生み出す。
試合はAIE国際ボールでスタート。意外性のあるキックオフから11番・宮城 丸の高速ドリブルで幕が開ける。開始5分ほどは滝川第二の激しいチェックに対し、AIE国際が器用にいなしていくという構図で進んだ。
6分、直接狙える位置でFKを獲得したAIE国際。キッカーは、準決勝・三田学園戦で決勝点を挙げた19番・山崎 徹也。しかし、シュートはわずかに枠の右。
10分、滝川第二は24番・空久保 善がロングボールを収めて左サイドへ展開。受けた14番・八木 寛人だが、相手DFの素早い戻りに阻まれてシュートには至らず。
11分、 AIE国際の宮城が独特のステップを絡めた前進からスルーパス。これに抜け出した9番・池内 颯海をPA手前で滝川第二の16番・浜口 巧成が倒してしまい、DOGSO(決定的な得点機会の阻止)として一発退場に。序盤から滝川第二は10人での戦いを余儀なくされる。
そんな中でも25分、滝川第二はカウンターから波状攻撃を仕掛け、最後はクロスを収めた空久保が体勢を崩しながらシュートを放つも、 AIE国際の体を張った守備を崩し切れない。
数的有利となったAIE国際はロングスローをはじめ、デザインされたセットプレーで幾度となくゴールを脅かしていく。
37分、滝川第二の7番・村松 風亜が中央のスペースを突き、約30mほど独走。フリーで並走する味方選手に預けようと試みるも、大きくパスがズレてしまいチャンスを生かすことができない。
40分、滝川第二の好機は再び村松から。右サイドでこぼれ球を拾った村松が供給したクロスに鋭く入り込んだ空久保がうまくコースを変え、ついにゴールネットを揺らす。しかし、わずかにオフサイドの判定。
開始早々に退場者の出る波乱の展開となったが、一進一退の攻防が繰り広げられ、前半はスコアレスで折り返す。
47分、 AIE国際は宮城が左サイドの突破からマイナスへの折り返し。一人スルーし、最後は16番・杉浦 煌仁がグラウンダーのシュートを放つも、うまくミートせずGKにキャッチされる。
一方の滝川第二も49分、ゴール前の混戦から13番・治部 翔に決定機。ただ、AIE国際の23番・GK釜田 統生が冷静にシュートコースを消しながらビッグセーブで見せ場を作る。
57分、 AIE国際の宮城が3人を相手に単騎突破を図る。抜け出す直前にカード覚悟のファウルで止められたものの、後半も圧倒的な存在感を披露。63分にも、カウンターから池内が華麗なフェイントを織り交ぜながらフィニッシュまで持ち込むが、滝川第二の卓越した対応が勝る。
65分、AIE国際は2025シーズンJ2藤枝内定、JFA・Jリーグ特別指定選手として今季すでにJリーグデビューを果たしている10番・河本 大雅を投入。
70分、その河本がスルーパス一本でセンターサークル付近から局面を打開。少し前に出ているGKのポジションの位置を把握していた池内が、そのまま虚を突くロングシュートを放つ。GKの頭上を越えたボールはそのままゴールに吸い込まれるかと思われたが、わずかに枠の左へ。
そのまま終盤まで0-0で進むが、アディショナルタイムはAIE国際のセットプレーによる怒涛のアタックが続く。だが、ここも滝川第二が集中力を切らさず。80分で決着がつかないまま延長戦へ。
延長も引き続き、互いに譲らない“キワの闘い”が見られる。
延長後半10+2分には、 AIE国際が杉浦のスイッチを入れるクサビを起点とし、宮城がPA内でのドリブルで2人の相手選手を引きつける。そこからラストパスを受けたのは再び杉浦。ダイレクトシュートが見事に枠を捉えるが、滝川第二の1番・GK竹本 航が間一髪の横っ飛びで弾き出す。セーブ後には渾身の雄叫びが飛び出した。
そして、命運はPK戦へ委ねられることに。
笑みを浮かべて余裕を見せるAIE国際と、足の攣る選手が散見される疲労困憊気味の滝川第二。AIE国際の上船 利徳監督は客席の自軍応援団を煽り、「これぞ新興勢力」と言わんばかりのイケイケムードを作り出す。ただ、兵庫の高校サッカーの歴史を創り上げてきた滝川第二の底力は計り知れなかった。
先攻・滝川第二の一人目、9番・鬼追 元汰が静寂に包まれる緊迫の場面でまさかのパネンカ。これがペースを奪い返すきっかけとなったのかもしれない。
両者、2人目までは全員成功。滝川第二は次のキッカーも成功し、迎えたAIE国際の3人目。ゴール左へ丁寧に蹴り込まれたボールだったが、滝川第二のGK竹本が読み切ってストップ。
4人目は互いに成功。そして、これを成功すれば勝利となる滝川第二の5人目のキッカーは、10番・三宅 蔵之助。後半途中から攣った足を伸ばす素振りを見せていた主将だったが、冷静沈着にゴール右へと転がしてゴールイン。100分とPK戦による白熱の決勝戦は、数的不利の状況をも乗り越える組織力を発揮した滝川第二に軍配。チームモットーである『怯まず、驕らず、溌剌と』を貫徹した。
あと一歩で敗れたものの、創部1年目で決勝まで辿り着き、独自のスタイルで県内のユース世代に新たな風を吹かせたAIE国際。今大会、2年生の出場機会が目立っており、来年以降も目が離せない存在だ。
最終的には全国制覇経験のある滝川第二が強かさを見せ、3年ぶり22度目の県大会優勝という幕引きに。昨年度、「日本のサッカーが発展してることが分かる」と、あの本田 圭佑氏に言わしめ、大会きってのインパクトを残した神戸弘陵に続く兵庫県勢の躍動に期待が懸かる。
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