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創作BL小説です。”宗教二世で洗脳されている主人公と、性的な児童虐待を受けた同級生が恋…

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創作BL小説です。”宗教二世で洗脳されている主人公と、性的な児童虐待を受けた同級生が恋に落ちる”というあらすじです。洗脳の実態や解放、PTSDからの回復、もがきながらも二人が一生懸命生きていく物語です。あんまり重くならないように。善のモデルは「エホバの証人」二世です。

最近の記事

【創作BL小説】箱庭の僕ら 14話

【光の箱庭】 パニック発作が起きてから1週間、あれからコンビニにすら行けなくなって、食事は買い置きのレトルト、宅配とネットで調達するようになった。 「一歩も外に出なくても生きていけるなんて、便利な世の中だよな」とひとり言を言う。 「一人暮らしの年寄りが、ひとり言ばっかり言うのわかるな」 ひとりでいる事を選んだ自分、実家にはもう二度と帰らないし、友人も知人もいない地方の都市だ、孤独になるのは必然だろう。 でも最近は、なんだか寂しさを感じない。決して強がりではなく、悲しみも

    • 【創作BL小説】箱庭の僕ら 13話 

      光は渡された名刺に目を落とした。 白の背景に観葉植物の葉っぱ、緑の文字で「窓の杜クリニック、医院長、渋谷大宙」と、書いてある。 「医者か、なるほど手際が良いわけだ。しぶやだいちゅう?変わった名前だな。」 フラフラとした足取りで部屋に戻り、丁寧に引き出しに名刺をしまい、ベッドに横になる。 しかし、さっきは本当に怖かった。死ぬかと思った。体はどこも悪くないから、精神的なものなのだろう。パニック発作、知ってはいたけど、これほどの恐怖だとは…外に出られなくなるわけだ。 今までも

      • 【創作BL小説】箱庭の僕ら 12話

        【光は、いまだ心の箱庭に閉じ込められている】 夏休み、寮は基本的に閉まるけど、俺はあいつと顔を合わせたくなかったから実家には帰らず、寮の部屋でひとり過ごしていた。 体力は、食事を調達しにコンビニに行けるくらいには回復していた。 エアコンの効いている室内で、1日中寝ていた。いくら寝ても寝たりなかった。起きていると、あいつに襲われた時のことを思い出すから、医者から処方された安定剤を飲んで日がな一日コンコンと寝ていた。 たまに起きると、絵を描いたり、作品を作ったりした。 実

        • 【創作BL小説】箱庭の僕ら 11話

          【光は箱庭から出たが…】 あいつが襲ってきたのは中学1年くらいまでだった。俺は成長し、元々小柄だったあいつの背を越えたあたりから、手を出しては来なくなった。 ただ金を出してくれるだけの父親になった。懺悔の気持ちもあるのか、設備の整った全寮制の私立の高校に何も言わずに行かせてくれた。 あいつと物理的に遠く離れることができて、本当にほっとしたし、ストレスが無くなったと思っていたが、それは甘かったみたいだ。 入寮してしばらくしたら、体中の力が抜けたような感覚に陥り、思うよう

        【創作BL小説】箱庭の僕ら 14話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 10話

          【善は箱庭から出られない】 さて、俺の高校生活は順調でもあり、順調では無いと言えばそれはその通りで… クラスではまた学級委員を任され、成績も上々で、人間関係もうまくいっていたし、生徒会からはスカウトの人も来たりして、俺の人徳のせい?と自惚れたりして、なかなか楽しい高校生活を送っている一方、幼馴染みで、同じ宗教二世の美智が、俺にまとわりついて離れない。 どこからの情報か知らんけど「俺と美智は付き合ってる?!」とかなんとか(美智が言って廻ってるらしい)周りの友人からも冷やか

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 10話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 9話

          【光は残酷な箱庭から出る】 俺が信じられた人間は、あとにも先にも善だけだ。俺を実際に助けてくれたのも善だけ、俺が「秘密」を話したのも善だけだ。 親、いわゆる「保護者」とは、子どもを保護するもので、子どもに関するあらゆる決定権を握っているし、保護者がいなければ、子どもは物理的にも生きていけない。その保護者が子どもを普段から襲っているなんて誰が思い至るだろうか? 初めてあいつにヤラれた時は、小学生だった。ケガもしたし血も出た。 すごい力で押さえつけられ、いつもと違う興奮した

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 9話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 8話

          【光の箱庭は残酷だった】 俺のことを少し話そう。 俺は、小さい時に父親を事故で無くた。しばらくして、俺が5、6歳くらいの時に母親は再婚した。 新しく父親になった人は優しい雰囲気で、母さんより少し年下、堅い仕事に就いていて経済的には申し分ない、母さんは楽しそうに暮らしていた。 その人は俺を殊の外可愛がり、俺が欲しがったものは何でも買ってくれた。 でも実の子でないし、まだ慣れてもいないのに、スキンシップが今思えば過剰だった。 俺は血の繋がらないこの相手との過剰なスキンシップが

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 8話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 7話

          「は?!結婚する?!」 あまりに突飛な話に俺は度肝を抜かれた。 こんなに驚いたことは初めてだったけど、努めて冷静に落ち着き払った態度で笑いながら俺は言った。 「また、美智は冗談が好きだなぁ」 そうしたら、驚いたことに美智は、 「善くん、覚えてない?わたしたち婚約してるんだよ。」 と、当たり前のような顔をしてニコって笑った。  はぁぁ〜?俺がいつお前と婚約したんだよ、てか俺らまだ高校生だぞ、将来勝手に決められてたまるかよ! 「それはないでしょ、この間10年ぶりに会ったのに」

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 7話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 6話

          【善の箱庭に、もう光はいない】 光がいなくなってから、俺の心はポッカリと穴が空いたようになって、新しく始まった高校生活も、なんだか惰性で過ごしていた。 俺は宗教二世だから、それでもやる事は多くて、日々の布教活動や学びの会なども頻繁に参加しなければならず、光のことを考えないで過ごす時間も増えた。 でも、1日の終わりのホッとする瞬間は、必ず光のことを思い出して、光からもらったノートを見て過ごした。 「光はどうしてるかな?寮生活は慣れたかな…」 なんて思いながら眠りにつく。時

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 6話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 5話

          過去記事こちらから 【善の話】 あっという間に卒業式の日になった。俺はこの日に向けて自分の気持ちを調整し、決意していた。今日で光と会うのは最後だ。 このままずっと光と接していれば、俺は絶対に光のことを好きになる。””同性愛””という最大の罪を背負う事になるんだ。それは出来ない。 今ならまだ引き返せる。光と物理的に離れれば、光と会うこともない、話すこともない、そうすればいつかはこの思いを忘れるだろう。 きちんと組織内でかわいい女の子を見つけて、結婚するんだ。そうすれば、俺は

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 5話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 4話

          過去記事こちらから 別れは言わない 中学三年生の最後の半年間は、登下校はほとんど一緒だった。俺が何か用事があっても、昇降口で光は待っていたし、光も学校に残って何かをすることはほぼ無かったから。 この期間はなんとなく二人とも、貴重な時間であるとはわかっていたけれど、それを特に口に出すことは無く、お互いが好きなゲームの話や、お勧めの本、最近書いている絵のことなど、楽しい話ばかりをしていた。お互いもうすぐ来る別れを忘れているかのように。 受験が終わり、光は志望していた北海道

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 4話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 3話

          前の記事はこちらから 善とヒカルの箱庭 【光の話】 「やめて!やめて!」小学校の4、5年の頃か、俺があいつにシャツを剥ぎ取られそうになっている時、家のインターフォンが鳴った。ピタッとあいつの動きが止まり、耳を澄ませる。もう一度チャイムが鳴った。   外から 「こんばんは、近所に住む水元と言います」 と子どもの声がした。あいつは戸惑った様子で俺を放すと、 「はい…」 と低く言って、玄関に行き扉を開けた。ドアの横には鏡があって、奥の部屋にいても扉越しに客人の顔が見える。そこ

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 3話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 2話

          光の過去 俺と光が仲良くなってしばらくたった。俺らは同じ中学に進学した。俺が放課後「奉仕活動」の無い日は、いつもの高台の公園で話をした。 光が今作っているもの、注目しているものはすべて俺の好奇心を刺激した。自由に思いのままに作品をクリエイト出来る光のことを、俺はとても羨ましく思うと同時に尊敬していた。 もう「親友」と言ってもいいかもしれない。見た感じ控えめな光の内面が、とんでもなく熱いということは、俺しか知らないんじゃないか、なんてうれしく思っていた。俺しか知らない光、

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 2話

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 1話

          I find "Hikaru" 俺は、夕陽が沈むのが見える高台の街に住んでいた。都内からほど近いニュータウンで、キレイで便利で治安も良かった。坂を上るのは苦労したが、普段は高台の上で生活が完結していた。スーパーもコンビニも、学校もその高台にあったから。僕は結構この街が気に入っていた。 後に友人となる光は、近所に住んでいた同じ年の男の子だった。学校は同じだったけど一緒に遊んだ記憶はなく、前髪は目の下まで伸びていて、顔が良く見えない。いつもうつむいていて、なんだか目立たない影の

          【創作BL小説】箱庭の僕ら 1話