「教員の報酬制度と労使関係 労働力の日米比較」

教員や外部指導者に課外活動に対する残業代を支払うことで、活動時間を適正にできるか、


私はここ数年、個人的な関心から運動部活動の指導報酬手当を調べています。昨年の今ごろだったと思いますが、メリーランド州モンゴメリー学区の資料にたどりつき、ツイッターでも紹介しました。この学区の資料は、全課外活動の指導に必要な時間数と内容が書かれていて、とても丁寧だなと思いました。そして、誰でもが閲覧できるように公開されていて透明性も感じました。各課外活動の総時間数の記載されている、その前段にもいろいろと説明が書いてあったのですが、昨年は読み飛ばしたままでした。

今回、購入した「教員の報酬制度と労使関係 労働力の日米比較」(岩月真也著、明石書店)には米国の事例が2つあげられていて、そのうちのひとつがモンゴメリー学区でした。
この本は、P164には
「第四に日本では馴染みの期末手当や勤務手当なるものは存在しない。その代わりに部活動への手当は整備されているようである。中略 もし、教員に部活動の顧問になる義務はなく、別途人を雇い、その者に部活動への手当が支払われるのであれば、教員の働き過ぎに対する規制を意味する。少なくとも、土日祝日に関わりなく部活動を行い、わずかばかりの手当で濁されるという事態に対する一定の歯止めにはなり得る」と書かれています。

私がモンゴメリー学区の資料に行き当たったのは、偶然であり、必然であると思い、読み飛ばした前段をもう一度読み直しました。

もとの資料はこれです。
https://www.montgomeryschoolsmd.org/uploadedFiles/departments/ersc/employees/timekeepers/eca_handbook_current.pdf

これの最初からxiiまでのところをざっくり訳しました。すみません、自分が把握できるようにざっくりな訳しかしてません。
https://docs.google.com/document/d/1_2lGqeexf3ZOauyLYghKzxptfn6Hl5PlthFXY35z7sM/edit?usp=sharing

米国の他の学区も同様ですが、まず、学校内、学区内の正規採用の教員が、できるだけ課外活動の指導を引き受けることを推進する規則になっています。
正規採用の教員、この学区の元教員で、ポジションを埋められないときには外部へと人を求めますが、いくつかの条件を満たさなければいけません。

また、モンゴメリー学区はそれぞれの課外活動を3種類にわけ、また、課外活動に必要な総指導時間から、俸給の額を算出しています。では、総指導時間数と俸給がが定められていることで、働きすぎを規制できるのでしょうか。

資料には、「定められた職務を行わなければいけない」となっています。つまり俸給の額は、指導時間数に対応しているので、教員が自分の判断で「顧問である自分の負担が大きいので、ゆる部活にしたいから週3回、各1時間の活動で済ませる」ということは簡単にはできないようなのです。絶対にできないということではなく、校長や学校区との交渉で俸給を減額してもらうことは可能かもしれません。

時給は15ドル程度です。

しっかり調べたわけではないので、なんとも言えませんが、
定められた職務を全うすることと決められていて、これに対しては校長の評価を受けるといった理由から、モンゴメリ−学区の場合は、部活動の手当が整備されていることが、そのまま、部活動の指導負担を減らすことにはつながるとは考えにくいのではないでしょうか。


指導時間とそれに伴う手当の額の設定が教員の働きすぎ抑止に効果があるとは言い切れず、活動時間を制限するのは、学校の運動部活動規則や州の運動部統括組織の規則であり、これを守るカルチャー(活動時間に対する考え方)があるかどうかだと私は今のところは考えています。

では、なぜ、部活動の手当が整備されているのか。それは教員間の負担と報酬の公平さではないでしょうか。

例えば、総活動時間の少なく身体的負担も少ない卒業アルバム制作クラブの指導と、総活動時間の多いアメフト部のヘッドコーチとでは、労働量が違うのだから、その違いを反映した俸給の金額にするべきだ、という考え方があるのではないか、と私は推測しています。

これについては引き続き調べたり、お話を聞いていきたいと思います。

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