へっぽこぴーりーまん書紀〜2社目編 東京編vol.13
セキヤとの関係破断
ボクの中で、成功モデルとなっていたセキヤ。
セキヤの原口バイヤーとは良好な関係を築けていた。
だいたい、提案すれば通る関係性。
正直図に乗っていたところがあった。
とある日、原口バイヤーから問い合わせがあった。
「プレスリリースであったポップ柄の水筒を扱えないか?」
問い合わせのあった水筒は、雑貨店ルート限定の商品。セキヤはホームセンターだったから、卸すことが原則できなかった。
いったんマニュアル通りの回答をした。
しかし、原口バイヤーは食い下がってきた。
「これまで御社の商品を気に入って伸ばしてきたんだよ。頼むよぉ。」
上司の足利に相談した。
やはり「会社のマニュアル通り断われ。」という通り一遍の回答。
検討した姿勢を示す意味で、だいぶ日数を置いて電話でお断りした。(これも良くなかったと思う。)
「ふざけんじゃねぇよ!」
原口バイヤーはブチ切れた。
「無理なところがわかって相談してんだよ!ルール通り無理っていうだけなら担当なんていらねぇんだよ!」
「どうやったら売れるのか提案してくれよ!それができねぇんならお前のところの商品カットするからな。カスだよカス。」
ボロボロに言われた。戸惑った。
そのまま課長の足利に相談した。
足利は案件ごと預かり、部長と何やら相談しているようだった。
足利はセキヤのバイヤーのところに単身訪問した。「オマエは来なくていい」と言われた。
その後そう日数も経たぬうちに、ボクは、大卒一年目新人の沢藤にセキヤ担当を譲ることになった。
足利は「担当を変更する」ことで事態の収束を図ったのだ。
しかも代役が大卒一年目の沢藤というのも、辛い現実だった。
沢藤には悪いが、「オマエの担当先は新卒一年目でも担当できる顧客だったんだぞ」と言われているようで。
それまで取引額を伸ばした労が全く評価されていないようで。
相当堪えたできごとのひとつだった。
庇う必要もない部下と思われていたのだろう。ボクは文字通りの得意先を失った。
ボクのクレームの進め方自体悪すぎたのだろう。早い段階で上司を連れていき、温度感なども含めて伝えていればこんなことにならずに済んだ。
何より現地にいかず、電話で断ったのも良くなかったと思う。
JBCホームセンターの問屋担当との関係性破断
悪いことは続く。残された最大顧客のJBC ホームセンター。
問屋担当の川西。
…また値引きを迫ってきた。それも事後承認。
しかも微幅な値引きでは無く大きな額だった。
課長の足利と相談し、譲歩幅を決定した上で交渉した。
しかし、ここで川西と電話で口論になってしまう。
破れかぶれの精神状態で、プラスにならない話をする。
ボクの精神コンディションは、当時非常に悪かったと思う。
川西からの値引き要望は5%以上に及ぶもので非常にキツかった。更には、事前相談もなく勝手に値引きをしてそれをメーカーに呑めという態度が許せなかった。
態度としても、私見抜きでかなり横柄だった。
「あんたやったら話にならへんわ。上司に変わってくれや」みたいな応酬を何度もされた。
心にある一線を越えた。
ボクはキレた。
川西に「ボクは会社を代表して対応しています」といった上で。
確か「川西さん。人としてどうなんですか?おかしくないですか?」みたいな言葉を川西に投げかけてしまった。
川西は激怒。「この若造が!」
もうそうなると売り言葉に買い言葉だ。
川西は上司の足利に直接連絡することになった。
いちおう足利はボクの言い分を一通り聞いた。
しかし、ホームセンターキングの一件もあり課長の足利が、ボクを積極的に擁護する姿勢は無いことは予想された。
足利と川西
その後…足利とボクは川西にアポイントを取った。トラブルの収束のためだ。
上野駅近くにある川西の行きつけのスポーツジムに向かった。
川西はよく営業から直帰でジムに行っているらしく、なんとかそのジム下の休憩スペースでなら話ができるということだった。
19時頃。足利には川西への非礼をまず詫びるようにと言われた。
その後は、ボクは場を離され足利と川西での対談になった。
密室会談…。セキヤの事例をみると、ボクの処遇を守ることにはならない対応だったに違いない。
その後足利から「客先に行かない」ことを指摘された。
客先に行かない営業
特にここまでのトラブル事例は、全て電話でのコミュニケーションで発生していた。
単純に、直接面と面でプラスでない話題を話すのが嫌だったのもあるし、特にお願いする側が足を運ぶべきだ。という変な奢りに似た感情があった。
原口バイヤーにしても、川西にしても、関連会社社長にしても…
トラブルの時は電話での対応だった。
もし訪問していたらここまで関係は悪化しなかったのかもしれない。
変なプライド無く
「ちょっと説明に伺わせてください」
「話し合いの場を設けさせてください」
とボクから出向いていたら。
トラブルこそあれ、その度合いは軽減していたかもしれない。
この2件は立て続けに発生させた顧客とのトラブルだった。
全ては後の祭り。もう遅かった。
Be free
夜に目が覚めてしまう。
暗い憂鬱な気分が襲ってくる。
朝身体がこわばって目が覚める。
疲れが取れない。
何もかも放り出して自由になりたかった。
心に武装した強がりだけの毎日だった。
自由になりなさい
楽になりなさい
誰かにそんな風に言ってもらいたかった。
そんな風により掛かりたいが、より掛かれない。
苦々しい日々。ボクは疲れ切っていた。
外側で突っ張っていたが、突っ張りきれていない。
どうしていいかわからなくなっていた。人が怖い。それを表面的な自己啓発のポジティブ思考で厚化粧する日々。
自分がどんな奴だったのかもわからなくなってきた。33歳になった頃の話だ。
(→次回に続きます)