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中日ドラゴンズ通信簿'24前期


はじめに

日本の夏、蝉の声。

今、静かにして木の下に宿れるなり。

我が心、その宿れるなりと同じき安き心にある──


 この風変わりな歌が詠まれて早7年、世の中は変わり続けるが誕生から90年を迎えるプロ野球の人気は未だ不変である。オールスターゲームを終え、ペナントレースも佳境に入るこの時期は気温に比例するかの如くファンも熱くなるものだ。一方で、残念なことに優勝争いから徐々に引き離されるチームも増えてくる。そしてお察しの通り名古屋では、独特のへばり付くような暑さと反比例した成績のチームが今年も苦しんでいた。

 全国のプロ野球ファンの皆様、こんにちは。ざんと申します。普段はTwitter(現X)にて中日ドラゴンズを中心に野球関連の話題について呟いています。

 さて今回はタイトルの通り、中日ドラゴンズの前半戦の成績や後半戦の展望について考察する。ドラゴンズファンは勿論のこと、他球団ファンの皆さんにもこのチームの現状がお伝えできれば幸いである。

チーム成績


 現在のドラゴンズは90試合を消化し38勝46敗6分の5位、4位の阪神とは4.5ゲーム差である。この戦績をどう捉えるかは人それぞれだが、筆者としては

渋過ぎる、かなり厳しい。

というのが第一だ。昨年の前半戦終了時では84試合を消化し34勝48敗2分。5位ヤクルトと1.5差の最下位だった。一時は首位に躍り出るなど好調に見られたが、気がつけば昨年までの定位置に戻りつつある。借金数こそ減ってはいるが、あまり喜べる内容ではないという声が多い。投打に分けてその理由を深掘りしていこう。


野手起用

 現在の主要チームスタッツは打率.233(4位)、本塁打39本(4位)、打点201(6位)である。※カッコ内はセ・リーグ内の順位

 ご覧の通り概ね例年通りの貧打ではあるのだが、今年は幾らか内容に変化があると考える。若手を中心に昨季より打撃成績が向上した選手が増えている事だ。特筆すべきは細川成也だが、12球団で見てもトップクラスのOPS.858を残し打線の核を担っている。

 また福永裕基は優秀な三塁の守備指標を残しながらOPS.746と打撃でも成長が見られる。この他にも阪神から育成契約で入団した板山祐太郎が支配下昇格後、目覚ましい活躍を見せている。村松開人も現在は故障離脱しているが一時OPSが.800を超えるなどポジティブな要素が多かった。これだけ見ると令和の強竜打線が徐々に現実のものとなり始めている、そんな風に感じる方も多いのではないか。

では何故、得点が増えないのだろうか。


打線の核?中田翔


 昨季オフの目玉補強として獲得した中田翔は、開幕前から立浪監督が主軸として起用する方針を明かしていた。そして現時点での成績がこちら。

打率.216,4本塁打,20打点,OPS.578

 主軸に据えるには、もっと言えばスタメン起用を続けるにはとても厳しい数字である。その原因は幾つかあるだろうが、特に影響が大きいのはコンディション不良と考える。というのも今季の中田翔は5月17日に肉離れで戦線を外れ、2軍調整をしていた。同月28日に1軍復帰を果たしたものの、2日後の埼玉西武ライオンズ戦では左膝付近に自打球が当たってしまった。6月2日放送の地元TV番組のインタビューでは「膝の状態があまり良くない。フルスイングとはいかない。」と明かしており、深刻な様子が伺えた。

 彼のプレースタイルや求められる役割を考えると、フルスイングができないことは死活問題だろう。しかしながらその後も1軍帯同は続き、登録抹消となったのは6月26日だった。6月は13試合に出場し打率.100、OPS.293に終わった。

 ベテラン選手にとって怪我は若い時以上に命取りになり得るものだ。強行出場を重ねる事で選手生命が短くなってしまうことも珍しくない。勿論優勝争いが掛かっている場合や、チームにとって欠かせない個人成績を残している場合であれば致し方ない部分もある。しかし今年の中田翔の場合は故障以前からさほど状態が良かった訳でもなく、石川昂弥やダヤン・ビシエドなど他の一塁手候補もいたため彼ひとりに懸けるしかないというチーム事情ではなかった。上位打線に置き続けたことで打線のブレーキになってしまった上、細川ら好成績の選手は勝負を避けられるケースも増えたことは打線におけるマイナスだったと言わざるを得ない。

 交流戦終了後、或いはオールスターブレイク後に照準を定めて回復に専念させる。万全な状態に戻して後半戦でブーストをかけるといった策略があれば、また戦況も変わったのではないか。そんなたらればをつい考えてしまう。


代打の切り札?中島宏之


打率.000,1打点,OPS.154
投手でしょうか?いいえ、代打です。

 これが今季の中島の成績である。13打席で出塁したのは2つの死球のみ、という前述の中田以上に苦しいのが中島だ。しかしながら、立浪監督は代打の切り札として大きな期待を寄せていた。

 かつて松井稼頭央の後継として西武の遊撃手を務めた強打が売りの中島は、MLB移籍後にオリックス・バファローズと読売ジャイアンツを経て今季ドラゴンズに加入した。通算1928安打の強打者だが、42歳を迎える今季はその打棒も衰えが隠しきれなくなっている。

 当然13打席のみでは有効なデータは出ないものではあるが、実際の試合映像を観るとどうにもスイングが鈍く見えるのは筆者だけだろうか。コンタクトできた打球も弱々しく、お世辞にも勝負所の代打に起用できる内容ではない。しばしばこうしたベテラン選手に対して、経験や勝負強さといった言葉で立浪監督は説明をするが、肝心の結果も内容も伴っていない現状では勝負強さとは一体何なのかと思案してしまう。もはや哲学の域である。

 就任1年目には福留孝介をこの役割に当てはめて積極的に起用していたが、24打数1安打という成績に終わり同年オフに引退している。経験だけで打てるのであれば引退する選手などいないのだ。立浪監督自身も経験だけではカバーしきれない衰えがあったからこそ、40歳で引退したのではないだろうか。勝ちたいのであれば結果にはシビアになるべき、至極当然のことだろう。


野手起用総括

 打つ方は必ず何とかすると宣言して既に2年半ほどが経過した。不可解な動きも多かったものの少しずつ若手野手が開花しているのはポジティブな要素だろう。後は1軍で使うだけ──なのだが、何故かこのタイミングで新戦力に期待を寄せて、成長株を干してしまう点は理解に苦しむ。我慢をする、といえば聞こえは良いがどうにもビッグネームや新加入の選手を過大評価している印象は拭えない。

 また、起用法が極めて限定的な選手が多い。前述の2名も一塁専又は代打専である他、盗塁が仕掛けられない代走要員や肩だけは強い選手らがベンチ枠を圧迫しており、延長戦でもないのに控え野手を使い切る勢いの試合運びも多く見られた。

 使いたい選手や使いたい戦術というのが第一になり過ぎた結果、戦術の幅が狭まりゲームの縛りプレイのような采配に陥っているのが残念でならない。これが今季の野手起用に対する所感だ。


投手起用

 「ドラゴンズの投手は良いですからね。」と、よく解説のコメントで聞かれるがこれは誤りである。現在のチーム防御率は2.71(4位)、先発防御率では2.89(4位)、救援防御率は2.41(4位)である。リーグ内で全て4位と中の下のチーム成績であるが、これが非常にまずい。引くほど広い投手有利な本拠地を有していながら、投手力が強みになっていないのだ。

 投手補強は筆者のTLでも再三叫ばれていたが、あまり有効な補強には至っていない。ここに関しては編成陣の責任が大きいのだが、起用の問題点も大いにある。何度か記事にしている点もあるが、今一度今季の起用を振り返りたい。


マシンガン継投

 以前こちらの記事で触れた内容にはなるが、早い話が全く改善されていない。

 今季のリーグ登板数ランキングでは上位5人中3人をドラゴンズが占めている。(ライデル・マルティネス42登板、松山晋也41試合、清水達也39試合)3名ともシーズン60試合を超えるペースだが、これだけ勝ちパターンの投手を使いながら勝てていないことは重く受け止めるべきだろう。

 ただでさえ得点が稼げないというのに同点時は勿論、ビハインドでも勝ちパターンが投入されるケースが多い。辛うじて先の3投手は故障なくここまでのシーズンを送っているが、層が薄い投手陣のやり繰りとしてはかなり危ない綱渡りではないか。

 勿論、柳裕也や大野雄大が2軍調整中な上、涌井秀章が今季絶望となった現状の不安定な先発陣が、リリーフ起用に影響を与えた側面はある。だからこそ、これ以上故障者を増やさない運用というのが求められるだろう。投手起用については思いの外書くことが少なかったため、ここで総括とする。


後半戦に向けて

 以上の反省を踏まえ、後半戦に期待することは3つ。

  1. 今、打てている選手を使う

  2. リリーフ投手の役割を明確に

  3. リリーフ→先発転向でローテーション強化

前回の記事とも重なるが、シーズン中にできる改善策としてはこの辺りだろう。3年目になってなお①②のような課題が挙がる時点でどうかと思うが、本気でミラクルを起こすつもりならばマストになるだろう。

 ③に関しては実際にリターンになるのは来季以降になる可能性も高いが、1人でもローテーション投手を増やすことができれば評価点になる。特にビハインドでの登板がメインの橋本侑樹や勝野昌慶らであれば、1軍戦力に大きな影響を与えずに先発調整を実施できるだろう。この両者はストレート、変化球共に非凡なものを持っている為、成功した場合のメリットは計り知れない。

 今持てる手札を如何にして使うのか、それこそが後半戦の大きな鍵となるだろう。

おわりに

意識を変えられない人は、
もう人を替えましょう。

 就任1年目のオフシーズンに立浪監督はこう話していたが、この言葉は首脳陣も例外なく向けられるべきだと考える。

5位に終わるチームではない

若い選手を一人前にする責任がある

ファンの期待に応えたい

 全て立浪監督自身の言葉である。巷では5年契約説も囁かれているが、せめてそれに値する結果を残して欲しい。筆者としては現時点で既に優勝は相当難しいと見ているが、どうにかチームを良い方向に導いて貰いたい。切に願っている。それでは、

あなたの毎日がドラゴンズで満たされますように

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