「道玄坂通」に行ってみたレポ
普段はホテルの宿泊記録をあげていますが、今回は渋谷にある「道玄坂通」という建物を見てきましたので、そのレポートです。
事業主はドン・キホーテの親会社の「パン・パシフィック・インターナショナル(以下、PPIH)」をはじめとした3社の共同事業で今年の8月にオープンしています。法的な「都市再開発事業」の位置づけではなく、普通の共同建替という位置づけのようです。
いわゆるデベロッパー会社の開発ではないことから、定石では考えられないような面白い点がたくさん見られたので、思わず記録に残したくなったということころです。
ポイント①:地型がとんでもなく悪い
建物の敷地の形を「地型」と呼ぶことがありますが、不動産開発において「地型」は非常に重要です。綺麗な形で効率よく建物を配置できるため、できるだけ正方形や長方形に近い形が理想とされています。そのため、不動産会社は、近隣の古い住宅やビルを買収したり、再開発組合をまとめて、四角く大きな敷地になるように工夫をするのですが、この「道玄坂通」は、そんな定石お構いなしにとんでもなく悪い地型の敷地に建てられています。
上のアクセスマップをみた通り、フジツボのようなゴツゴツとした地型が何とも存在感を放っています。
ポイント②:道がそのまま入り込んだような1階の店舗配置
そんな「地型」の悪さを逆手に取ってこの建物のコンセプトができたように思います。「道玄坂通」という名前の通り、1階の通路はガラス等の仕切りはなく、通りが延長するような形で建物の敷地内に誘われるようになっています。
道が延長して、その両隣に店舗があるというような配置のため、店同士の統一感がなくても、違和感がなく街の中の細い路地を探索しているような気持になります。
ポイント③:新築建物の内装の雰囲気じゃない
事業主がPPIHということもあり、中にドンキホーテのプライベートブランドを中心に扱う「ドミセ」という店舗が入っています。この「ドミセ」、新築の建物に入るのだからさぞかしオシャレな旗艦店という感じで作り込んでいるのだと思いきや、いつもの通りの店舗の雰囲気で、安い内装・蛍光灯のような照明、ごちゃごちゃした商品陳列で、ある意味安心感があります。
ポイント④:そうかと思えばいきなりオフィスが現れる
低層階は街の延長のようにごちゃごちゃした雰囲気なのですが、2階に上がると突然オフィスのエントランスに繋がるきっちりしたエスカレーターが現れて、ここが新築建物の内部だということを思い出させます。
プレスリリース等で建物の全景イメージをみるとわかりますが、上階は普通に四角い建物なので、整形のしっかりしたオフィスになっていそうです。とはいえ、渋谷の駅前から少し離れたこの立地で、オフィステナントが入るのか不動産をやっている人間からすると、かなり不安になります。ただしこちらの記事によると
とのことで、営業部隊や仲介のリーシング力が高いのか、物件自体の魅力が評価されているのかわかりませんが、不安は杞憂のようです。
ポイント⑤:さらに上階は外資系のオシャレホテル
ここまででお腹いっぱいなところですが、更にすごいのはこの建物の最上階層はIHGという外資系ホテル会社の「インディゴ渋谷」が入っています。もともと、こちらのホテルに潜入調査すべく、この建物を目指してきたのですが、その他のところでツッコミどころが満載でそれどころではなくなっていたのです。
先程「ポイント①」でみたように、この建物は非常に複雑な敷地の上に建っていますので、いろんな方向からアクセスできるようになっています。さらには道玄坂の方に向かって上り坂になっていて、北側は1階から入るけど、東側は3階からアクセスする、というように入口の階層が違うということも起こっています。
そのため、ホテルのメイン入口は坂の途中の3階からアクセスすることになります。動線としてはめちゃくちゃわかりづらく、初見でこのホテルにたどり着くのはかなり難しそうです。
せっかくなので、ロビーをチラッと見てきました。表通りとはまた違った世界が広がっていて不思議な気分になります。
夕方にお邪魔したのでチェックインしているお客さんが数組見えましたが、若いアジア系のカップル(もしかしたら日本人?)もいたりして、立地柄、客層なのか非常に気になります。
まとめ:ごちゃごちゃ感を楽しめるか?
ここまで見てきたとおり、建物は敷地の形が複雑で高低差もあり、商業施設・オフィス・ホテルが入っていて、とにかく入り組んでてごちゃごちゃになっていました。
中でも動線については、しっかりとフロアマップや案内サインを見れば目的地にたどり着けるのでしょうが、建物内には目印になるような場所や大きな吹き抜けなどもなく、これは不動産開発の定石から言って非常に不親切で使いづらい建物、ということになると思います。
ただ、渋谷の街中にあって、ドンキホーテの会社が作った建物というと、まあそんなものか、というか、妙な納得感があります。街の中を探索していくドキドキ感やその中で思わぬものに巡り合えた時のうれしさ、そういったものを感じることができる建物でした。
アクセス数やスキの数がいただけそうなら、今後、こういう街歩きや建物訪問のレポートを増やしていくかもしれません。ではまた。