「盗作」を読んで

今回の記事はヨルシカが発売したアルバム「盗作」に付いていた小説を読んで、そして曲を聴いた上での感想を書いていく。

この作品…というかアルバムは小説の主人公をモチーフにしている作品だ。

この物語の主人公は作曲家でいわゆるゴーストライターと名前は出ない代わりに有名人に曲を提供することを仕事にしている。

「売れるメロディには特定のパターンがある」

男はそう言いながら、曲を盗んでいた。

私がヨルシカを知ったのはヒッチコックという楽曲だ。

ヒッチコックという人間を恥ずかしながら知らなかったが、今調べたらどうやら映画監督のようだ。

自分自身の生き方に悩んでいる青年が足掻く姿を歌った作品のメッセージ性に惚れてずっとその曲だけ好きだった。

あるタイミングで新発売する「盗作」の話を聞き、何の気無しに購入。

小説が特典で付いてくる、という点が大きな理由だった。

しばらく流して聞いていた。

曲はいいし、歌も上手い。

正直、その程度の感想しかなかった。

しかし、ふと歌詞に目をやったときに衝撃を受けた。

こんなにも、純粋に音楽を愛している人間がいるのかと。

自分の中にぽっかりと空いた穴。その穴を埋めるために音楽を書くしかなかった。

自分と同じだ、そう思ってしまった。

私は、物語だった。

私は役者をしていたときに、自分が観たい作品の脚本を書き続けた。

彼と違ったのは一部の人にしか理解を得られなかったことだ。

それでも、やっぱり自分の空いた穴を埋めるために脚本を、小説を書き続けた。

曲の最後「まだ足りない」とひたすらに繰り返す。

そして、最後は美しいものを知りたい、と終わる。

作品を描いたときに、1番納得してしまうのは「この人の気持ちがわかる」と感じてしまうときだ。

まだ足りない、美しいものを知りたい。

その言葉に共感してしまった。

私も過去の人間の知恵を「盗作」しながら生きていく。

彼と、同じ結末は望まないと信じている。

ざくろ

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