フリーショート台本『我が家の猫大名さま』
三人台本ですが、兼ね役でもオーケーです。
あと、男性キャラばかりですが役者の性別縛りはないので楽しく演じていただければ幸いです。
【 登場人物 】
マロン(猫♀)
若い猫。中身は戦国大名・新野宗隆泰時(ニイノムネタカヤストキ)。おっさんの声で喋る。
武満 タケミツ(男、中高生くらい)
マロンの飼い主。ツッコミ多め
力弥 リキヤ(男、中高生くらい)
コガ中のヤンキー。前世は新野(以下略)に仕えた忍者。
マロンと一緒に世界統一をしたい。
『我が家の猫大名さま』
マロン『武満、疾く起きよ、武満。』
武満「……んあ?おじさんの声が聞こえる…夢かぁ…」
マロン『起きぬか武満』
(鋭い猫パンチが武満のほっぺに炸裂)
武満「いっでぇ!!!!」
マロン『ようやっと起きたか、不精者よ』
武満「いたぁ…あぁ、マロンか。起こすならしっぽで優しく撫でて起こしてよ。」
マロン『既に行った末にこの結果じゃ、阿呆めが』
武満「くそっ!!起きてる時に確認出来なかった自分が憎い!!」
マロン『残念であったな』
マロン『はよう散歩の支度をせぬか。待たされる側にもなってみよ。まだ儂が気の長い方でいたのがお前の幸いよ。』
武満「あ〜はいはい俺がのろまのぐーたらですみませんでしたね〜〜?てか、散歩ぐらい他の猫みたいに自由に行って来ればいいのに。自分からリードするように言ってくる猫なんて聞いたことないぞ?普通は喋りもしないけど…」
マロン『儂の様な美しく可憐な猫が昼間といえ一人で出歩いてみろ。野蛮な野良共に貞操を狙われるに決まっておるわ。先日も何匹か後ろから追ってきた輩がおったが、彼奴らをあしらうのにも数が多くて骨が折れる。それに』
武満「それに?」
マロン『雌猫だといういまの己に違和感もあるのに、獣と交合うなぞ……寒気がする。』
武満「立派なメス猫だしガッツリ獣だけどそれ言う?」
(間)
武満「……これで、よし。リードつけ終わったぞ」
マロン『うむ、では参ろう。出陣である!』
武満「はいはい…」
武満「そういえばさ、前に言ってたアレなんだけど。」
マロン『なんの事だ。』
武満「ほら、一番最初にニャホリンガルつけた時に喋ってた『ニーノムネタカナンチャラ』って名前。あん時はまさか飼い猫がオジサンの声で喋り出した時はびっくりしたけど、あれなんだっけ?」
(にいのむねたか やすとき)
マロン 『新野宗隆泰時だ。』
武満「そうそうそれそれ。んでさ、まさかと思って色々調べたんだよ。そしたらほんとにその人実在してたんだよ!」
マロン『当本人がそう名乗ったのだ、いて当たり前だ。というより疑っていたとは初耳だぞ』
武満「いやぁだって急に喋り出したと思ったら『我が名は新野宗隆泰時だ(モノマネ気味に)』って言われても信じる方がやばいぞ?しかも猫だし。ーーで、話は戻るけど地元じゃ有名な武将な反面で、都市伝説扱いされてたぞ。」
マロン『としでんせつ?なんだそれは。』
武満「なんていうか…不思議な伝説のある人として知られてたんだよ。政治もばっちりこなしながら領地の土地守って、戦でもめちゃくちゃ強くて「猛虎(もうこ)の新野」なんて呼ばれてたらしい。…でも大きな戦の最中に、突然「八竈(はちかまど)の藪知らず」?ってとこで姿を消したってネットにあがってたよ。」
マロン『……そうか、その様に伝わっていたのか。』
武満「え、なんか違うの?」
マロン『違うも何も、儂はーーー』
力弥「よぉタケミッチャアン!!会いたかったぜェ〜!?」
武満「げっ!コガ中の力弥!!」
マロン『なんだ、知り合いか?』
武満「(声を抑えて)なるべく近づきたくないレベルでは知り合いかな…。アイツ変な不良グループのリーダーで、町中のネコの飼い主に絡んで回っては、要求に応えないとひどいことされるって噂で有名なんだよ…!」
力弥「おいおいナーニ1人で話しちゃってんのー!?この前バックれて帰ったツケはきっちり返させてもらうからなぁ!!」
武満「だからぁ、アンタらが何考えてるかわかんねぇけど!!うちのマロンには関係ないだろ!!」
力弥「うるせえ!!それはお前が決めることじゃねぇんだよ!!痛い目見たくなけりゃあ、とっととその猫様を俺に寄越しな!!」
武満「マロン、ここははやく逃げ……ってあれ、マロンさん?」
マロン『ーーー話を聞いて居れば好き勝手に吠えよって…』
力弥「!!」
武満「マロン!?何してんだよ、狙われてるのお前なんだぞ!?」
マロン『確かに…おぬしの言う通り、儂の首を狙う野党の前にわざわざ出ていくなど愚の骨頂のそれよ…ましてや人の子とかたや一介の猫では、力の差など一目瞭然。
―――だがな、武満。いま、儂が使える主は武満、おぬしじゃ!力の差や脅威の差はさして問題ではない!!ここで死力を尽くして従える主君の身を守らいで逃げるような漢では「猛虎の新野」の名が廃る!!』
武満「マロン、おまえ…!!」
武満ナレ(漢って言ってるけど、今は女の子なんだよなぁ)
マロン『我こそは、新野宗隆泰時!今は我が主君・武満に仕える猛虎なり!!そこな賊よ、腕に覚えあればお相手致す!!』
武満「はっ!いやいや普通に危ないから!!早く逃げるぞマロ…ん?」
力弥「は・・・・・」
武満・マロン「『・・・は?』」
力弥「はわわぁ~~~!!///お、お館様ぁ~~~!!」
マロン『みゃっ!?』
(マロンに抱き着く力弥)
力弥「(甘えるような声で)ついに!ついに見つけ致しましたぁ!!はぁああ~~~このようなモッフモフで愛らしいお姿になられて、弥助は大変お探し申しましたぁ~~!!スリスリスリ~~」
マロン『や、やめんかきさ・・・なに!?弥助だと!?』
武満「えっ、知り合い?!」
(かくかくしかじか5分後…)
武満「‥‥えーっとつまり、今までの話を整理すると、力弥…さんは元々前世でマロン…じゃなかった新野、さん?」
力弥「(すごんで言う)様をつけろ。」
武満「ヒェッ…す、すいません。え、えーっと力弥さんは元々新野様、のとこで働いていた忍者の頭で、八竈の藪知らずで行方不明になった新野様を生まれ変わっても探し続けてたと?」
力弥「おう。」
武満「でも、何でマロンが元々新野…様だって思ったんですか?普通転生するとかなったら人から探しません?いやその前に、生まれ変わっても探そうって続けるのもすごいけど。」
力弥「何も闇雲に探していたわけではない。お館様が消息を絶ったあの八竈の藪知らず(はちかまどのヤブしらず)には、”迷い込んだものは生まれ変わる際に、最も愛していたものに近い存在に生まれ変わる”という伝承があった。お館様には”雪之丞(ゆきのじょう)”様という雪のように白い猫をこよなく愛されておられたのだ。」
武満「それで、ネコとして生きている…って探し始めたのか。ん?でも、飼い猫なんてどこにでもいるから大変だったんじゃ?」
力弥「そこは我が甲賀衆の情報網でどうとでもなったわ。」
武満「え、今も忍者いるんですか?!」
力弥「転生する旨(むね)とお館様に関する捜索を続けるよう、我らが孫の代まで言い伝えておいたからな。ちなみにコガ中は我ら甲賀衆の建てたものだ。」
マロン『現代の甲賀衆本拠地ということか』
力弥「いかにも。今までの情報ではなかなかたどり着けんかったが、先月よりお前がいろんな野良猫にそのニャホリンガルを確かめては首を傾げる様を見たと報告があったこと、更に家の中で自分の飼い猫に独り言のように語りかける不審な行動がご近所さんの間で噂されていたのを我が生徒たちが目撃している。」
武満「最近噂されてたの?!そういえば、最近やけにすれ違ったあとにコソコソ話してると思ったら、俺ヤバいやつ扱いされてたのかよ…」
マロン『ふはは、滑稽だな武満よ。』
武満「誰かさんのお陰でね?!」
力弥 「…お館様、幾星霜の時を経てやっとお会いできた弥助の望みはただ一つにございます。」
マロン『…申してみよ』
力弥 「再びお館様のお旗本にて、日ノ本の天下統一を目指しとうございます!」
武満 「て、天下統一?!いや、いやいや無理でしょ!!だって戦国時代と世界情勢全く違うじゃん、しかもマロンはうちの猫だぞ!?」
力弥 「我ら甲賀衆の力量を舐めてもらっちゃ困る。今までお館様の帰りを待ちながら下準備は順調に進めている。さらにお館様が帰城されたとなれば尚士気も上がり…」
マロン『弥助…いや、今は力弥か』
力弥「はい、お館様」
マロン『お前の熱意、そして今までの尽力ご苦労であった』
力弥 「はっ、勿体ないお言葉にございます…!」
武満心の声『まさか、本当に天下統一を目指して…でも、雄猫に追っかけられたり、俺みたいな飼い主に飼われるよりもそっちの方が…』
武満 「マロン、お前行くのか…」
マロン『…武満よ』
武満 「な、なんだよ」
マロン 『やはりお前は、阿呆よな』
武満「……、はぁ?!」
マロン『力弥よ、儂は今この武満を主として生を全うすると昔に誓ったのだ。…まぁ、猫の生など人の子からすればまことー瞬の出来事だろうが、このだらしなくズボラグーダラの情けない主を見守ってゆきたいのだ』
力弥「お館様…」
武満「ん〜?しれっと飼い主のことバカにしたな?」
マロン『馬鹿になどしておらん、事実を述べたまでだ』
武満 「重ねて傷つくわ!」
力弥 「お館様の固いご意思しかと承りました。しかし、この力弥、お館様との天下統一…いや、世界をお館様の元に統一する夢は決して諦めきれませぬ。いつかお館様が、我らを率いてくださることを信じております。」
マロン『力弥…ふっ、あきらめの悪い男よなぁ。…だがよかろう、その挑戦受けて立とうではないか。しかし、儂は手強い猫だぞ?力弥。』
力弥「…!!っはい…お館様!」
武満「で、結局帰ってったけど、どうすんだよ?また来るって言ってたぞあの人。今回は暴力沙汰にならなかったからいいけど、次どうなるか…」
マロン『なに、元は儂に従えておった輩(ともがら)。手荒な真似はせんだろう。それに万が一、儂が今使えているお前に力弥以外の甲賀の者が危害を及ぼせば、まず力弥自身や側近がタダでは済まさんさ。そこから内輪モメして組織が潰れれば痛手を負うのは彼奴らが一番わかっておろうよ。』
武満「ならいいけどさ…?でも、マロンが本当にウチを離れたくない理由はそこじゃないだろう?」
マロン『にゃっ、にゃにを言うか!!わ、わしはまことのことしかいうておらんぞ!?ほかに理由なぞ・・・!』
武満「あーもしもしかぁさん?最近マロンがプヨプヨして太ってきたみたいだから、いつものかぁさん手作りマロンご飯の量減らしておいてくんない~?」
マロン『フニャアァ――――!?おい武満止めろ!!わしの数少ない楽しみを減らすとは何たることだ!!いますぐ前言撤回せんかぁ!!』
武満「え~どうしたんですかマロンさぁ~ん?なぁんかめちゃくちゃ慌ててません~?…いまの電話は、ただの練習ですけどぉ~???」
マロン『ニャッ?!た、騙したのか!フゥウウウたぁああけみぃつきぃいいいさまぁああああ~!!』
武満「へっ?!わぁあああごごごめんやり過ぎましたご…ごめんなさぁあああい!!」
マロン『ゆるさぁあん!!シャァアアア――!!』
~Fin~