見出し画像

阿刀田高版アーサー王物語感想

Kindleで読める阿刀田高バージョンのアーサー王伝説があるので、早速読んでみた。
基本的にはマロリー版と似たような展開だが、いくつか異なる点がある。

1.アーサー王の誕生
アーサーが生まれた経緯やアーサーが王になった経緯などが描かれる。
ウーゼルのNTRムーヴやケイの弟の手柄横取りムーヴも健在。
そこから一気に飛んでペリノア王との一騎打ち、エクスカリバーを手に入れる話になる。
ペリノア王の馬泥棒の件は隠された。そこは舗装するんかい。

2.勝利の人
アーサー王がグウィネヴィアを手に入れる経緯。
知らん話である。そんな事あったんだ……。
その後はローマ征服の話も出てくるが、巨人の討伐が主でルーシャスは悲しみのナレ死だったりする。

3.のろわれた血
省略されがちなベイリン卿の冒険。
ロマンス展開もあったり自分の何が悪いのか理解して反省できたり、マロリー版より知性が高そう。
やっぱり原液ベイリンくんは野蛮すぎてダメだったか……。
山のガーニッシュくんはベイリンくんから解放された。よかったね。

4.妖女モルガン
かのエクスカリバー盗難事件。
あまり変更はなく、アコロン卿が死んだりマントを代わりに羽織った侍女が死んだりするのも同じ。

5.涙の旅詩人
トリスタン本人がアーサー王に語るという形で綴られる、トリスタンの生い立ち。
トリスタン誘拐事件、アイルランド側との決闘、イゾルデとの出会い、そして恋に落ちるまで。
自分の不貞を自分で語っていく精神は恐れ入る。

6.黒い帆が見える
円卓の滞在、もう一人のイゾルデとの結婚、トリスタンの死まで。
こいつ……二章も使ってやがる!
トリスタンは後から組み入れられた事もあってか、やたら分量が多い。
あとセグワリデス伯爵夫人にも手を出してた件は抹消された。

7.緑の怪人
ガウェイン卿と緑の騎士。
うん、特に言う事はないね……だってほぼまんまだからね……。
他と比べると真っ当な物語すぎて舗装の必要性がなかったのだろう。

8.ラーンスロットの地獄
エレインとの出会い、王妃への許されぬ恋心辺りまでは一緒だが、だいぶ舗装されている。
ブルーセン婦人は抹消され、代わりにモルガンが嫌がらせでエレインに協力した事になった。
ランスロットとエレインが王妃の隣の部屋で寝た件もなくなっている。
まあランスロットが狂って行方不明になった話は残っているのだが。
そこは舗装されないんだ……。
ちなみにボールスとパーシヴァルが探し出して祈ったら正気に戻った事になっていた。
しかもエレインはアストラットのエレインと同一視されたらしく、ダイナミック押しかけ遺体をした事になっている。
全てのエレインのヤバさを一箇所に集中させるな!!!!!!! とんでもねえモンスターが爆誕しとる!!!!
あとランスロットが王妃と結ばれたのはエレインと子供作った後になってる。
やっぱり二十年以上浮気はさすがに擁護できんと思ったのかな。
あとマロリー版にはめちゃくちゃあるランスロット卿無双話がバッサリ削られているため、あんまりランスロット卿最強! イエイ!感がない。
そしてここからは聖杯探索がこれから始まりそうな予感を感じたところで、この章は終わる。

9.王はどこに
このタイトルで始まるのが聖杯探索なの、タイトル詐欺だと思う。
ギャラハッドが円卓入りし、すぐに探索が始まる。
あとパーシヴァルがなんか結婚して円卓抜けた。
これは息子がいるバージョンを採用してるのかな……。
探索もめちゃくちゃ圧縮されており、皆でカーボネック城行ってギャラハッドが死んで終わりだ。
推しの活躍エピソードが……バッサリ削られている……!(悲しみの咆哮)
王妃誘拐事件も語られるが、元ネタタイトルが「ランスロまたは荷車の騎士」なのに荷車シーンカット。そりゃねえだろ。
まあこの話、今後の展開の前フリなんだよな。
この時助けられたお礼って事で王妃がランスロットを部屋に呼び、それを聞きつけたアグラヴェインが……という流れで破滅が始まるのだ。
ちなみにガウェインがアグラヴェインの動きを察知してさりげなくボールスに教えてくれ、ボールスはちゃんとそれをランスロットに警告したのに、奴は上の空で聞いちゃいなかった。
あなたっていつもそうですよね!!!!!!!!! ボールスくんの事なんだと思ってるんですか!!!!!!!!(推しの扱いに突如キレ出す)
その後の展開はだいたい同じだが、ガウェインとランスロットの不和の元となるガレスとガヘリスの存在はアグラヴェインの息子二人に置き換えられている。名前も出ない。

かなり読みやすいのでぜひ読んでほしい。

いいなと思ったら応援しよう!