20030720 加牟波理入道(2)
以前、妖怪の「加牟波理入道」は「がんばり」か「かんばり」かという論争が一部で巻き起こった$${^{*1}}$$ことがある。一部といってもほんの一部である。私とある読者との二人の間だけである。
「加牟波理入道」の原典である鳥山石燕の画図百鬼夜行を調べることによって論争の終止符が打たれた$${^{*2}}$$。
と思っていた。「画図百鬼夜行$${^{*3}}$$」の「加牟波理入道$${^{*4}}$$」のページをよく見ると、どうも「がんばり」というのが怪しくなってきた。
解説文の部分を拡大したのがこれ$${^{*5}}$$である。題目のところは「か」になっている。解説文中では「が」なっている。題目の振り仮名は変体仮名の「か」$${^{*6}}$$だが、濁点がない。
この不統一は一体どういうことだろう。古文書にある現象として書写をしているうちに単なる汚れが文字の一部として書き写されてしまう、というのがある。これもその類だろうか。画図百鬼夜行は江戸時代の印刷出版物なのでそういった書写による変化はない。
「がんばる」という言葉はその場所にじっとして動かないという意味だから、それが妖怪の名前になっても何ら不自然ではない。「頑張る$${^{*7}}$$」は「眼張る」が転じた言葉とも考えられている。「眼張る$${^{*8}}$$」は見張るという意味だから、これでも妖怪の名にふさわしい。
それでは「かんばる」というのは一体どんな意味なのか。以前の記事ではそんな言葉は聞いたこともないと書いた$${^{*1}}$$が、調べてみたら「甲張(かんば)る$${^{*9}}$$」という言葉があった。「甲走る$${^{*10}}$$」と同じで、声が高く鋭く響くという意味である。甲高い声がするということである。
「がんばり入道ほととぎす$${^{*11}}$$」という呪文があるぐらいだから、ほととぎすの鳴き声$${^{*12}}$$からの連想で「甲張り入道」でもおかしくはない。
どちらでも成立しそうだが、やはり「がんばり」の方がしっくり来るような気がしてならない。
*1 19991231 大晦日のまじない
*2 20000331 がんばり入道
*3 百鬼灯篭 ~画図百鬼夜行と妖怪と~ コンテンツ・妖怪
*4 gambari1.jpg
*5 gambari2.jpg
*6 変体仮名を調べる 変体仮名 五十音順一覧1
*7 国語辞典 [ 頑張る ]
*8 国語辞典 [ 眼張る ]
*9 国語辞典 [ かんばる ]
*10 国語辞典 [ かんばしる ]
*11 19991109 加牟波理入道
*12 日本国語大辞典第二版オフィシャルサイト:日国.NET ほととぎす