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20040706 むやみ

 新聞を読んでいたら、また変な表現に出くわした。この新聞は変な表現が多すぎる$${^{*}}$$

 「田んぼをむやみに耕さないと、イトミミズ$${^{*2}}$$が帰ってくる」とあった。田んぼを耕さずに稲作をする$${^{*3}}$$と、田んぼでイトミミズが繁殖してそれを食べる昆虫、魚、水鳥などが戻ってくると言うのである。

 記事の内容は問題ないのだが、書き出しに引っ掛かった。

 「むやみ」というのはあとさきを考えずにまたは度を過ぎて何かをするさまである。「むやみに歩き回る」「むやみに使わない」「むやみに叱る」など、肯定的な使い方はしない。

 一方、「○○しないと、××になる」という表現は、本来○○すれば、○○してくれれば、××とはならないのにそうでないことを仮定する場合に使う。「勉強しないと、落第する」「雨が降らないと、枯れてしまう」「叱られないと、勉強しない$${^{*4}}$$」といった具合である。本来○○すれば、○○してくれればというのが重要である。「せかせか歩かないと、楽だ」とは表現しない。「せかせか歩く」のは当たり前でもないし、したくもないからである。

 「むやみに耕さないと、帰ってくる」だと、本来は「むやみに耕す」ということになってしまう。確かに文法は間違っていない$${^{*5}}$$。一般常識や記事の内容からすれば「むやみ」が本来のさまであるはずがないので、こういった「むやみ」の使い方は適切ではない。

 もしかしたら「田んぼを耕さない」という逆転の発想を強調するためだけに「むやみに○○しないと、××になる」という表現を使ったのかも知れないが、これでは違和感が出てくるので無理がある。どうしても「むやみ」を使いたければ、「田んぼをむやみに耕せば、イトミミスが帰ってこない」か「田んぼをむやみに耕さなければ、イトミミスが帰ってくる」である。

 新聞の記事などは文学作品ではないので、文法や表現方法に多少違和感があっても内容さえ購読者にとって価値があればそれ程問題はないと考えることができる。

 逆に文法や表現方法が素晴らしくても書いてある内容が詰まらないのは最悪である。「読みやすい文章だが、内容は稀薄」だと読み終わった後に悔いだけが残る。読了するまで内容の稀薄さに気づけなかった自分の未熟さを反省すべきなのだが、読むのに費やした時間をついつい惜しんでしまう。

 それにしても件の新聞には、文字や文章を使って商売をしているのだから、もう少し気を使って欲しい。

*1 20031005 直截
*2 [熱帯魚]All About Japan 【イトミミズ(イトメ)】
*3 不耕起農法、今最注目です!
*4 20020216 命題(2)
*5 20040503 ジャバウォッキー文

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