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20020901 蛍光表示管

 ニキシー管$${^{*1}}$$のあとに蛍光表示管$${^{*2}}$$と呼ばれる数字表示装置が出てきた。数字の色は青緑色でニキシー管の橙色に比べて涼しい感じ$${^{*3}}$$がする。蛍光表示管では時計を作ろうという気はなかなか起きない。それはニキシー管と違って蛍光表示管は現在でも様々なところで使用$${^{*4}}$$され続けているので、懐古趣味には合わないのである。ただ、電卓の数字表示で見かける$${^{*5}}$$ことが殆どなくなった。

 蛍光表示管が光る原理は全く違う$${^{*6}}$$。ニキシー管$${^{*7}}$$は放電によって封入されたガスが電極の付近で発光する。蛍光表示管はガスが光るのではなく、数字の形に塗られた蛍光体がヒーターから放出された電子の衝突によって光る。ニキシー管では電極の形で表示される図形が決まるが、蛍光表示管では蛍光体の塗られた形で決まるので、こちらの方が表示図形が豊富に描ける。気圧の低いガスを電子で光らせるのではなく、圧倒的に気体より密度が高い固体の蛍光体を光らせるので電子のエネルギーは小さくて済む。蛍光表示管が動作する電圧$${^{*8}}$$はニキシー管の100V以上に対して、12~40V程度で済む。

 この蛍光管は日本で発明された$${^{*8}}$$らしい。この記事を書くに当たって初めて知った。中村正$${^{*9}}$$氏が発明した。

 しかしよく読んでみるとどうもしっくり来ない。このページを読んでみる$${^{*10}}$$と「世界で初めて『蛍光表示管』という表示デバイスの開発に成功」と書いてある。全く新規な工業製品が世に出る迄の流れは「発明」があって、それを基に「開発」して、製品を「設計」し、「生産」して、「販売」である。「開発」というと「発明」を少し具体化する事と普通は捉えられる。「発明」しないと「開発」出来ない。何もないところから出発する発明の方が遙かに難しい。「発明」という言葉を使わずに敢えて「開発に成功した」としたのは何か意図があるのだろうか。

 蛍光表示板の基本的な構造はテレビジョン受像器などに使われるブラウン管の構造$${^{*11}}$$と殆ど同じである。蛍光表示管は偏向板がないだけである。ブラウン管は蛍光体に電子が入射してくる側の反対側で図形を表示するようになっているが、蛍光表示管は電子が入射する側で図形を表示する様にっている。蛍光表示管の基本は全てブラウン管に含まれている。

 つまり数字表示装置としてブラウン管を特化させたのが蛍光表示管なので、基本的な発明にならないのかもしれない。表示装置として発明は発明でも基本的な発明ではないので、自らは「発明」と言わず「開発」としているのは日本の技術者の謙虚なところである。

*1 20020831 ニキシー管
*2 特徴|蛍光表示管(VFD)|ディスプレイ事業|双葉電子工業株式会社
*3 色彩の心理的効果 ~色彩の心理的効果~
*4 ノリタケ伊勢電子の製品(概要)
*5 http://www.hpmuseum.org/9100pr.jpg
*6 APF102 蛍光表示管の原理と構造
*7 Counting & display tubes
*8 蛍光表示管 FAQコーナー
*9 蛍光表示管の歴史
*10 中村会長の部屋
*11 静電偏向形ブラウン管の構造

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