20070619 がくうそうでん
専門用語で鉄塔によって空中に架けられた電線を使って送電することを「架空(がくう)送電$${^{*1}}$$」と言うらしい。対して地下にトンネルを掘ってそこに電線を這わせる送電を「地中送電$${^{*2}}$$」と言うようだ。架空を「想像したもの」という意味に間違われないようにわざわざ「がくう$${^{*3}}$$」と濁って読むようだ。
送電線の撤去$${^{*4}}$$について調べている途中に、このことを知った。かなり違和感がある。仲間内でわざと違う読み方をする場合はある。「口腔(こうこう)$${^{*5}}$$」を医学関係では「こうくう」$${^{*6}}$$と読むらしい。それは何と混同するのを避けてそう読むようになったかよく解らないが、これが定着しているようだ。「首長(しゅちょう)」も一部では「くびちょう」と読む$${^{*7}}$$。
誤解を回避しようとして「私立(しりつ)」を「わたくしりつ」と読むように目的がはっきりしている場合と違い、「こうくう」や「くびちょう」は誤読が定着してしまい引き下がれなくなった例だろう。「がくう」もそうではないか。「かくうそうでん」と聞いて「想像上の送電」と想像する人はどれくらいいるのだろう。少なくとも電力関係者にはいないような気がする。
それにしても「架」という漢字を「が」と読んでしまった原因は何か。「懸架」「書架」「開架」「閉架」「架橋」「高架」「十字架」「架台」どれも「が」と濁る読み方はない。「加」が含まれる漢字で「が」と読むのは伽藍$${^{*8}}$$の「伽」と「賀」ぐらいだ。これらと「架」を混同することもないだろう。すると何かのためにやはり故意に「がくう」と読むようになったのか。
「架線(がせん)$${^{*9}}$$」からか。まず最初に「河川」などと区別するために「架線」を「がせん」と読むようになったのではないか。「架線」と「河川」とでは発音が全く違うので通常は混同するはずがないが、発音する人の出身によっては「橋」「箸」や「雨」「飴」の様に逆転する場合があるだろう。架線が「がせん」ならば架空も「がくう」だ、ということで「がくうそうでん」という言葉が出来上がったかも知れない。
*1 送電線
*2 送電線の定義
*3 TEPCO : 電気・電力辞典 | 地中配電線
*4 20070618 高圧送電線の撤去
*5 こうくう 0 【口▼腔】 - goo 辞書
*6 日本口腔咽頭科学会
*7 20040903 首長
*8 伽藍のご案内-薬師寺公式サイト|Guide-YAKUSHI-JI TEMPLE
*9 線路に関する安全管理|りんかい線<りんかい線の災害・安全対策>
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