20030329 水素自動車
ガソリンを一滴も使わないで8万km以上の距離を自動車で走った$${^{*1}}$$という記事がある雑誌に載っていた。水素を燃料として動くエンジンを搭載した自動車である。直接、エンジンで水素を燃焼させて動力を得る。最近、燃料電池$${^{*2}}$$を搭載した自動車も市販されている。水素と酸素とが化学反応を起こして水を作る時に発生する電流でモータを動かして走る自動車である$${^{*3}}$$。
8万kmを走るのに水素を5万5000リットルを使ったらしい。水素はエンジンの中で燃えて水蒸気となって排出される。水素を空気で燃焼させれば、空気に含まれる窒素や二酸化炭素も水素の燃焼時に反応して窒素酸化物などが出来る$${^{*4}}$$はずだが、水蒸気の量に較べると微量らしい。こういう量の少ない有害物質はフィルターなどを使って簡単に除去できるのかも知れない。
水素自動車も燃料電池車も、今までのガソリン車やディーゼル車のように石油燃料を燃やすことによる排気ガスがでないので、環境に対して非常に影響が少ないと思ってしまう。果たして実際はどうだろう。
水素をどうやって作る$${^{*5}}$$かである。水を電気分解すれば水素が出てくる。電気分解するには電力が必要である。電力は火力、水力、原子力などで作られる。火力であれば化石燃料を使うので結局、二酸化炭素や有害物質を大気中に放出していることになる。原子力でもウランなどの採掘、使用済み燃料の再処理$${^{*6}}$$、放射性廃棄物の処理$${^{*7}}$$などでエネルギーを使う。そのエネルギーの一部はやはり化石燃料を使っている。
化石燃料を改質して水素を得る方法もある。化石燃料から水素を分離すると二酸化炭素が出てくる$${^{*8}}$$。生物を使って水素を作る方法$${^{*9}}$$もあるらしい。これは大量生産が難しいような気がする。
水素を作るのに水力、風力、太陽光のみを使用して$${^{*10}}$$初めて、水素自動車の意味が出てくるだろう。そもそも古代の生物が何万年何十万年もかけて水と空気中の大量の二酸化炭素とを合成してそのエネルギーを地下に閉じこめた$${^{*11}}$$。それを数十年、数百年の単位で消費して大気中に二酸化炭素を放出しているのだから地球環境に急激な変化がないはずがない。
生物の根本的なエネルギー源は太陽の光しかない。これは古代でも現代でも同じである。その太陽の光や熱を使って何万年何十万年もかかってエネルギーが地下に貯められた。水力、風力ももともと太陽の光がエネルギー源なのでこれらに頼るエネルギー製造方法は生物のエネルギー製造方法と根本的に同じ筈である。現代は古代のエネルギー貯金$${^{*12}}$$を物凄い速度で消費する使い方をしている。水力、風力、太陽光のような貯金無しで造るエネルギーでも同じような使い方ができるのだろうか。
原子力$${^{*13}}$$という人類以外の地球上の生物が今まで直接利用したことがないエネルギー源がある。これならば太陽の光とは違って素早くエネルギーが取り出せる。しかし放射能の問題$${^{*14}}$$があるので、水素を造るエネルギー源として安易には利用できない。
さて、水素自動車をどう考えればいいか。
*1 BMW Japan BMW 750hL
*2 20020801 燃料電池
*3 燃料電池自動車の基本構造
*4 環境用語:水素自動車
*5 HHOG
*6 TEPCO : よくわかる原子力講座 | 第6回 原子燃料も下ごしらえがかんじん 5/5
*7 高レベルの放射性廃棄物はどこにあるの?
*8 二酸化炭素(炭酸ガス)
*9 朝日監査法人|ビジネスリソース|環境マネジネントニュース|「環境と化学物質」 第2回|Page2
*10 BMW Japan 理想的な代替エネルギーである水素
*11 蒸発岩 -その生い立ちと石油鉱床への関連(その1)-|JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト
*12 TEPCO : 環境エネルギー学習 | 石油・天然ガスができた
*13 原子力図書館 げんしろう
*14 19991001 臨界