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20090906 遺伝子とDNA
最近、DNAと遺伝子とが全くの同義語として扱われている。DNAはデオキシリボ核酸の頭文字$${^{*1}}$$で化学物質名だ。遺伝子は、生物の親から子にその細胞から細胞に伝えられる生存に必要な形質を決定するための因子を指す。従って全く違う範疇の言葉なので、通常は同義語にならない。もし化学物質の一つである「塩化ナトリウム$${^{*2}}$$」が生物の遺伝子であったら、遺伝子とNaCl$${^{*3}}$$とが同義語になっているのと同じである。これは相当違和感があるだろう。実際、分子構造が単純なNaClが遺伝子ならば、人類は恐らく言語や文字が発明できなかったに違いない。だからこんな言葉に関しての違和感は起こりえない。塩が遺伝子ならば、そもそも多細胞生物$${^{*4}}$$さえも地球上には出現しなかったかもしれない。何となくそんな感じがする。DNAの構造がNaClよりもはるかに複雑だからそんな風に思うのだろう。
では、遺伝にDNA以外を使う生物はいないのだろうか。どうもいないらしい。ウィルスの中にはDNAではなく、リボ核酸$${^{*5}}$$つまりRNAを遺伝子にしている$${^{*6}}$$のもいるらしいが、ウィルスが生物かどうかはっきりしないから、まぁ、全生物がDNAを遺伝子として使っているとしてもいいのだろう。といっても「全生物」とは人類が知り得る生物の全てであって、地球上の生物全てではない。もしかしたら発生の起源から全く違う進化を遂げた生物$${^{*7}}$$が地球上には存在していて、その生物の遺伝子は全く違う物かもしれない。化学物質ではなく何か物理的な形状や性質を遺伝子としている場合もあるかもしれない。全く否定はできないだろう。
と言う訳だから「DNA」と言う言葉を「遺伝子の意味$${^{*8}}$$」の如く使うのは、少し程度が低いとことである。遺伝子のことを言いたければ「遺伝子」と日本語で言えば済むことだ。それをわざわざ「DNA」と西洋風に言い換える$${^{*9}}$$から間違ってしまう。「いでんし」と「でぃ(で)ーえぬえー」とでは大して略にもなっていない。英語化することが素晴しいことで国際化につながると考えているのなら「DNA」ではなく「gene$${^{*10}}$$」の方が適切だろう。しかも「じーん」ならば少し短くなっている。
何れにしても「遺伝子」という日本語があるのだから、言い換えは間抜けだ。
*1 デオキシリボ核酸 ( Deoxyribonucleic Acid,DNA )
*2 物性物理超入門編 電子とイオン結合と共有結合
*3 Web教材 NaClの状態変化・水への溶解 Ver 1.11 (2009/2/22)
*4 CGで見る生物のしくみとはたらき-多細胞生物の構造
*5 RNAとは
*6 15-2:RNAウイルス
*7 童子神の変容
*8 遺伝子の部屋 遺伝子とは
*9 19991228 ローマ字の略語
*10 geneの意味 英和辞典 - goo辞書