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20020515 ペアノ曲線

 正方形を埋め尽くす曲線$${^{*1}}$$がある。実際にはあり得る。針金を隙間無く正方形の下敷きか何かの上に丹念に折り曲げていけば隙間無く正方形の隙間を埋め尽くすことができる。

 しかし数学という机上の理論では線には太さがないのでいくら丹念に折り畳んでも一向に太さは増えないので正方形が埋まるはずはない。

 ところがイタリアの数学者ペアノ$${^{*2}}$$が今から112年前(※2002年の執筆時点)に正方形を埋め尽くす「数学的な」曲線を発見した。ペアノ曲線$${^{*3}}$$と呼ばれる。

 曲線というと丸みを持って曲がっている線という感覚だが、折れ線も曲線の仲間なのだろう。この曲線$${^{*4}}$$が正方形を埋め尽くしているというのは簡単に判りそうでよく判らない。

 曲線の折れ曲がりがどんどん複雑になってこれが無限$${^{*5}}$$に繰り返されれば、正方形を埋め尽くされるような気がしてくる。

 ところがどんどん複雑になっていくのだが、それに伴って無限の倍率を持つ顕微鏡$${^{*6}}$$で見れば、まだ複雑ではない最初と全く同じ曲線が顔を覗かせるはずである。ということはいつまで経っても正方形を埋め尽くすのは出来そうにない。

 昔、こんな証明を教わったことがある。「三角形の二辺の長さと底辺の長さは同じである」という命題$${^{*7}}$$の証明である。三角形の二つの斜辺の中点で折り曲げて、頂点を底辺にくっつける。底辺にローマ字の「W」をひっくり返して付けた様な形になるが、「W」の長さと元の三角形の二つの斜辺の長さの合計と同じ長さである。これを無限に繰り返せば最後には底辺と折り曲げた斜辺との区別が無くなる。証明終わり。

 ペアノ曲線の場合は、拡大しても同じような操作で同じような曲線をいくらでも描ける、ということから正方形が埋まると考えていいのだろう。向かい合わせた鏡に何か物を映したときのような感じで面白い。

*1 20001207 自然数と実数
*2 Peano
*3 Mathematica: ペアノ曲線
*4 曲線とは何か?
*5 20020225 超無限大
*6 20000406 原子間力顕微鏡
*7 20000204 徒然草の論理

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