20000525 微小な部品
LIGAプロセス$${^{*1}}$$と呼ばれる技術がある。プロセスというのは工程とか製法とかいう意味である。それではLIGAとは何か。LIGAとはドイツ語の頭文字をつなぎ合わせたもので、元の言葉はLithographie(リソグラフィー$${^{*2}}$$:写真製版) Galvanoformung(電気メッキ) Abformung(成型)である。
何をする技術かというと非常に小さい機械$${^{*3}}$$の部品を作る技術の一つである。直径が1mm以下の精密な歯車$${^{*4}}$$を同時に大量に作ることが出来る。何のための小さな機械部品かというと映画「ミクロの決死圏$${^{*5}}$$」のような人体内で病気を治すような大きさが数ミリの微小機械や微小ロボットの部品である。現時点ではその様な微小機械の実現はなされていない。しかしその為の技術の一つとしてLIGAプロセスが発明された。
LIGAプロセスはドイツのカールスルーエ研究所$${^{*6}}$$で開発された。当時は微小機械$${^{*7}}$$の発想はなかった。そこでウランの濃縮分離$${^{*8}}$$ノズルの作製にこのLIGAプロセスを用いようとしたのである。ただ、ノズルを作りたくてLIGAプロセスを開発したのではなく、LIGAプロセスそのものを先に考えたのではないかと思われる。
LIGAプロセスを思いついたが何か応用するものはないかと思い、分離ノズルを作るのに使ってみるか、と言うことになったのではないか。LIGAプロセスを実現するにはある巨大装置$${^{*9}}$$が必要である。その装置の有効利用の苦肉の策のような気がしないでもない。予算制度の下で展開されている現代の科学技術の世界にはありがちなことであろう。
*1 住友電工・播磨研究所のホームページ
*2 パターン形成
*3 F.E.R.C Research Data - 1996/12/15
*4 Guest Experiments
*5 FANTASTIC VOYAGE
*6 Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
*7 Auf einen Blick - Mikrosysteme
*8 遠心分離法
*9 シンクロトロン軌道放射