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20031110 ワイヤボンディング

 LSIやIC*$${^{*1}}$$など半導体$${^{*2}}$$と呼ばれる電子素子は電気で動いている。電子素子だけでは一切動くことは出来ないので、素子の外から電気を供給しなければならない。またLSIやICは電気信号を処理するための素子なので、その電気信号の出し入れを外とやり取りしなければならない。

 LSIやICを見ると黒い平たい直方体の側面に沢山の金属製の端子が並んでいる$${^{*3}}$$。この端子が外部との電気のやり取りをする。黒い直方体の中には信号を処理するチップ$${^{*4}}$$と呼ばれる物が埋め込まれている。このチップは黒い直方体の1/10から1/5ぐらいの大きさで大抵は殆どがシリコン結晶で出来ている。シリコンは半導体なので「半導体チップ」と呼ばれる。

 例えばコンピュータのCPU用のチップの表面には精密な印刷技術によって何十万のトランジスタを使った複雑な回路が形成されている$${^{*5}}$$。

 この回路で外部からの電気信号を処理するには端子とチップとを電気的に接続しなければならない$${^{*6}}$$。その技術を「ワイヤーボンディング$${^{*7}}$$」という。ごく細い電線を使ってチップと端子とをつなぐ。

 多くの電流を流したい回路ではアルミニウム製の電線を使い、電流は極微量だが、端子と端子との隙間が非常に狭く沢山の端子とチップとをつながなければならない場合$${^{*8}}$$は金製の線を使う。金はよく伸びて$${^{*9}}$$電気抵抗が非常に低い$${^{*10}}$$のでLSIのワイヤーボンディングには打ってつけである。

 どうやってつなげるのか。チップの接続部分は数十ミクロン角$${^{*11}}$$と非常に小さいので半田付けなどはとても出来ない。そこで金線の先を球状にして$${^{*12}}$$接続部分と球の部分とに超音波を掛けながら押しつけて潰して接続する$${^{*13}}$$。超音波によって部分的に熱が発生して金と接続部分とがくっついてしまう。これで半永久的に接続は切れなくなる。ジェット旅客機に搭載されている制御用のLSIなども皆この方法で作られている。

 金線の直径は数十ミクロン$${^{*14}}$$で髪の毛よりはるかに細い。その線の先端をどうやって球状にするか。熱するのである。糸を燃やすと縮れるように先端を熱すると金が溶けて表面張力によって金線の先に球ができる。以前は小さなバーナーを用いて熱していた$${^{*15}}$$が、最近はワイヤーボンディング専用装置$${^{*16}}$$の電極と金線との間に電圧を掛けて放電$${^{*17}}$$させ、その時発生する熱で球を作るようになっている。

*1 NEC: Press Release 2000/10/02-01
*2 20030102 構造敏感な半導体
*3 埋め込みICの一例
*4 LSIチップ写真
*5 20011019 魔鏡
*6 リコーおもしろ科学館
*7 よくわかる!半導体
*8 Wirebonding in microelectronics (Knowledge Summary)
*9 おもしろ資料館 ●湯之奥金山博物館・・・美しく輝く金
*10 7. 金属の電気抵抗|チップワンストップ - 電子部品・半導体の通販サイト
*11 Datamath Calculator Museum Intel and TI: Microprocessors and Microcontrollers TMS1000_DICE.jpg
*12 QEL Home Page VESTA-S ボール写真
*13 The Fundamentals of Wire Bonding by Techstar Innovations Pte Ltd.
*14 金ボンディングワイヤー
*15 http://www.asme.org/history/brochures/h160.pdf
*16 田中貴金属グループ|Bonding Lab ボンディングサイクル編
*17 QEL Home Page VESTA-S トーチ電源とボンダー本体との接続図

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