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20040808 江戸時代の避妊法

 ある本を読んでいたら江戸時代の遊女$${^{*1}}$$は和紙を使って避妊をしていたと書いてあった。

 和紙を丸めて唾で濡らし、膣内に入れていたらしい。「詰め紙$${^{*2}}$$」と呼ばれていたようだ。この本の作者は、この避妊方法は万古不易の方法であり、現代の避妊法よりも簡便で優れている日本人の智恵なので長く伝承していきたい、と語っている。

 無茶苦茶な話である。そんな方法で避妊ができるはずがない。和紙を膣に入れたぐらいで子宮への精子の侵入を防ぐことはできない。殺精子剤$${^{*3}}$$でも妊娠の可能性があるのに、和紙を丸めて唾で濡らしただけで避妊効果があるとはとても考えられない。

 江戸時代でも精液が子宮に入り込むことによって妊娠するということは、当然、庶民にも判っていた事柄であろう。だから和紙を丸めて使う避妊方法が考案されたに違いない。

 「たねつけ」というぐらいだから、精液は赤ん坊の「たね」で子宮は「畑」という考え方だったかもしれない。精液に含まれる精子と卵巣から排出された卵子とが輸卵管内で受精して子宮内部に着床し妊娠する$${^{*4}}$$というしくみは想像できなかっただろう。

 そうなるとヨーロッパで描かれたある絵を思い出す。中に小さな赤ん坊が入っている精子の想像図$${^{*5}}$$である。江戸時代の人々もこんなのを想像していたのだろうか。

*1 花魁道中絵はがき 第1~3輯
*2 吉原再見(近世・江戸時代吉原遊廓) 【遊女と避妊】
*3 20030917 マイルーラ
*4 自然妊娠の仕組みと不妊の原因|北見 不妊外来|中村記念愛成病院
*5 Chapter 12: Differentiation | Heredity and Development, Second Edition | John A. Moore | National Academy of Sciences Classic Textbooks in Science

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