20000922 整数に近い無理数
数というのは天与のものであると考えるべきなのか、人間が作り上げたものと考えるべきか。算数や数学を習う上では、何となく天与のものであるかのように教えられてきたような気がする。よく考えてみれば「数」というのは人間が作り出した概念であって、人間以外の生物が独立に同じような数学という学問を作り上げるかどうかとなると疑わしい。
例えば地球以外に文明を持つ生物がいるとして、その生物が三角関数$${^{*1}}$$とか、微分積分$${^{*2}}$$とかトポロジー$${^{*3}}$$という概念を持ち得るかと考えると、とても同じような考えを持つとは思えない。表記法が同じになると言う意味ではない。同じ概念が発生するかと言う点で考えると、そうでないと考える方が自然である。基本的な概念の数(すう)についても同じだろう。しかし人間の考えた数学を宇宙人が理解するかどうかは別問題である。
そうすると数は天与のものと考えるよりは、勝手に作り上げたものと考える方が妥当であろう。勝手に作ったものであるが、神秘的なところが沢山ある。勝手に作り出したとは言え、不思議なものである。
小学生の頃、$${12345679\times9=111111111}$$というような計算で数字がきれいに並ぶのを本か何かで知ったときには、何かを発見したような気分になった。筆算で計算していくと将棋倒しのように1が並んでいくのが面白かった。
最近、同じような気分を味わった。
実数は有理数と無理数とに分類する事が出来る。更に無理数$${^{*4}}$$は2次方程式や3次方程式などの解になり得る無理数と係数が整数のn次方程式の解になり得ない無理数に分けられる。後者を超越数$${^{*5}}$$と呼ぶ。超越数には円周率πや自然対数の底$${e}$$などがある。
さて、この超越数を累乗によって整数に変換することは簡単にはできない。$${\sqrt{2}}$$は2次方程式の解なので自乗すれば整数の2になる。$${π}$$の自乗を計算しても三乗根を計算しても、もともと方程式の解になっていないので整数にならない。0乗すると「1」になるが、これは除外する。
しかし限りなく整数に近づけることが出来る。
$${R=e^{(π\sqrt{163})}=262537412640768743.99999999999925...}$$
となり$${^{*6}}$$、殆ど整数になっている。これを見たとき無限小世界の隙間を顕微鏡で覗いたような気分になった。エイプリルフールにマチン・ガードナー$${^{*7}}$$が「この数は整数である」と、かつて発表した事があるらしい。それにしてもこのような数をどうやって見つけたのだろう。
*1 中学生に送る簡単三角関数
*2 やさしい数学講座第13章 微分と積分?イントロダクション?
*3 『位相幾何』
*4 π,その甘い響き(1)
*5 πとは?Part1
*6 Ramanujan Constant -- from Wolfram MathWorld
*7 20000322 あなたの知らない世界