20060613 ヒーラ細胞(2)
ヒーラ細胞$${^{*1}}$$と呼ばれる実験用の生き物がいる。1951年にアメリカのヘレン・レーン$${^{*2}}$$さんという女性の子宮癌から採取した細胞で50年以上経った今でも研究室のシャーレの中で増殖を続けている。彼女はとっくの昔に亡くなっている。
人の体から取り出したのだから一つの細胞だけでも、それは人の一部であって他の何物でもない。だからと言ってそれを「ホモ・サピエンス$${^{*3}}$$」と言っていいのだろうか。人の遺伝子情報が組み込まれているわけだから、やはりその細胞は「ホモ・サピエンス」としか言いようがない。
「ホモ・サピエンス」というと人類の進化図$${^{*4}}$$を思い出してしまう。左から右に歩いていく間に、最初は猿のような姿がだんだん人らしくなっていく挿絵$${^{*5}}$$である。人の形をしているから「ホモ・サピエンス」であって、一つの細胞に対して「ホモ・サピエンス」と言うのは何か抵抗がある。
ヒーラ細胞も最初は「ホモ・サピエンス」であることは間違いないのだが、元の本人と関係なしに研究室のシャーレの中で無限に増え続けているので、もう「ホモ・サピエンス」とは言えないと思われるようになってきたらしい。1991年から別の種の「Helacyton gartleri」と呼ばれているそうだ。
*1 20001027 新生物
*2 20001029 ヒーラ細胞
*3 Homo sapiens(ヒト)
*4 20050226 北京原人
*5 sinka.gif