20030721 点線破線
点線や破線が不確定な線を表すようになったのはいつ頃からだろうか。点線や破線という言葉は元々日本にあったのだろうか。これらは英語の「dotted line」「broken line」を直訳した言葉なのだろう。
そういった言葉がなければその概念もないということだから、明治より昔は「点線」や「破線」そのものが日本には存在しなかったかもしれない。
現代の漫画であれば点線や破線が透明な物や不確定な姿を現すのに使われる。これは漫画の中の約束事であるので、現代のような漫画が出現するまでは点線や破線が絵に使われることはなかったのではなかろうか。
漫画には流線というものがある$${^{*1}}$$。これらは漫画の中の主人公の動きや心情を表すのに効果的に使われているが、この流線の約束事が読者に了解されているから使えるのである。この約束事は戦後に漫画が発達する過程で出来上がった。
「点線」「破線」についても同じ様な約束事が出来てきたはずである。点線や破線が透明や不確定を表すという約束は、流線より簡単な概念だから、もっと昔からあったに違いない。
江戸時代に出版された「画図百鬼夜行$${^{*2}}$$」には破線を用いた絵がある。明治時代より以前に破線を使っていた。「朧車(おぼろぐるま)$${^{*3}}$$」という妖怪の絵で出てくる。朦朧とした状態を表現するのに破線が使われている。我々が見れば絵の中の破線は不確定な物を表すという約束事が染みついているので、その絵を見ても何ら疑問を抱かないが、当時の人々はこれを見てどう感じただろう。多くの人がちゃんと朦朧とした状態を感じとったのだろうか。そうだとするとこの約束事はいつできたのであろう。
当時の読者が朧車の解説を読んで「破線」が朦朧とした状態を表していることを了解していたのなら、これが「点線」「破線」の約束事の始まりかも知れない。
*1 【小学館 まんが家養成講座】まんがの背景を描こう!(後編) | イラスト・マンガ描き方ナビ
*2 京極堂の本棚 鳥山石燕の世界
*3 oboroguruma.jpg