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20030608 撥水剤

 本来ガラスは水を弾かない。丁寧に洗浄したガラス板を水に浸けて取り出すと、ガラスの表面が水の膜で覆われている。こういった現象を「濡れる$${^{*1}}$$」という。もともと水は表面張力$${^{*2}}$$で丸くなろうとするが、ガラスの主成分である酸化シリコンは水分子と馴染みやすいので水が丸くなろうとする$${^{*1}}$$のを引き留めてしまう。酸化シリコンに含まれる酸素原子$${^{*3}}$$と水の水素原子$${^{*4}}$$とが弱い結合を形成するからだろう。水分子同士では互いの水素原子と酸素原子とが弱い結合$${^{*5}}$$している。水分子は酸素原子を多く含むガラスの表面も水分子の続きだと思って馴染んでしまうのである。

 ガラス食器などを洗った時、その表面で水を弾く部分があればその部分は油汚れ等が完全に落ちていないことになる。油には水や酸化シリコンのような弱い結合が出来る状態の酸素原子が含まれていないから水とは馴染まない。

 自動車のガラス撥水加工等にはこれを利用$${^{*6}}$$してしている。ガラスに均質に$${^{*7}}$$が塗られていればきれいに弾かれる。

 油とガラスとは濡れやすいのか弾くのか。$${^{*8}}$$を主成分とした自動車ガラスコーティング剤$${^{*9}}$$をガラスに塗ると、作業中はコーティング剤自体がガラスに弾かれているように見える。ガラスは水に濡れやすく、油は水を弾く。コーティング剤は水を弾く物質の筈だからガラスにも馴染みにくい、と考えれば弾かれても不思議はない。弾かれてしまうとガラスに被覆ができないことになる。ところがちゃんとガラスにコーティングされて数ヶ月間は雨を弾いてくれる。

 何となく不思議だが、油汚れはどんな物にも大抵頑固に付着していまうので水の濡れやすさに関係なくガラスにもコーティング剤はちゃんと付着するのだろう。

*1 接触角(ぬれ性)とは
*2 NSIII「水と人間」講義資料2002 水の特性(その4) ---- 表面張力(Surface tension) ----
*3 SPIE--The International Society for Optical Engineering. The Optics, Photonics, Fibers, and Lasers Resource. OER 166: Looking glass
*4 Visualizing Molecules Binary Molecules
*5 Aula Virtual de Biolog
*6 眼鏡かわら版 第113回:撥水性と親水性
*7 信越シリコーン|オイル:シリコーンオイルの特性
*8 有機ケイ素の化学とその利用(暫定版)- - 身の回りのシリコーン系製品を中心として - -
*9 Rain-X

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