20060204 町内の掲示板
特許法における「公知」とは一体どういうことを指すのだろう。特許法では「特許出願前に公に知れ渡っている発明は特許にできない$${^{*1}}$$」としている。例えば出願前に「頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」は特許を受けることができない。「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」とはインターネットなどで公開された発明のことである。インターネットはいつでも内容を簡単に変更できるので日付などがしっかりしたページでないといつ公開されたかはっきりしない。その発明が公開されたのは出願前か後かで大違いだ。そこで公開日をはっきりさせているサイト$${^{*2}}$$がある。ここで発明を公開すれば、その発明はその時点で公に知れ渡ったことになる。
何故そんなことをするか。特許には金が掛かる$${^{*3}}$$。金をかけて特許にする$${^{*4}}$$ほどの発明ではないが、他人がその真似をしてそれで特許を受けるのは都合が悪い。そこで自ら先に発明を公開して他人の都合の良いようにはさせないためである。
私は以前にチキンラーメンの「凹み」の考案を雑記草で公開した$${^{*5}}$$。これでこの凹みに関する特許は誰も受けられないと思っていたが、そうでもなかった。現在は実際に日清食品が凹み付きのチキンラーメンを販売$${^{*6}}$$しているので、今さら特許を申請しても無駄になるだけだが、雑記草の記事にした後でも暫くは特許を受けることができたかも知れない。個人のサイトによる公開の日付は信憑性が低いからである。
とは言え、アメリカのインターネット図書館「インターネット・アーカイブ$${^{*7}}$$」に2000年5月11日付けで件の記事がインターネット上に存在されていることの記録$${^{*8}}$$がなされている。もしかしたらこれが日付の証明になるかもしれない。
誰でも知っていることで特許を受けて利益を保護しようとすること自体が無理な話だ。だから特許法では「誰でも知っていることとはどういうことか$${^{*1}}$$」ということが定義されている。インターネットに公開されたファイルは誰でも見ることができるが、目的とするファイルを見つけることは事実上不可能だろう。前述のような特定のデータベース$${^{*2}}$$に登録されているならば検索することができるが、そうでない場合は検索サイト$${^{*9}}$$で見つけ出すのは至難の業だ。従って個人のサイトでは公開したことにはならない。町内の掲示板に発明の内容を書いて張り出すのと同じである。
自分が公開した発明で他人が特許を受けているのを見つけて特許無効審判請求$${^{*10}}$$をしようとしても、その根拠が町内の掲示板ではどうしようもない。
*1 特許法 第2章 特許及び特許出願(特許の要件)
*2 公開技報WEBサービス内容と料金体系
*3 特許法 第3節 特許料(特許料)
*4 特許法 別 表(第195条関係)
*5 20000117 チキンラーメン
*6 20030605 チキンラーメン(2)
*7 20041004 インターネットアーカイブ(4)
*8 0001雑記草
*9 Google