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20090815 アブラゼミの語源

 アブラゼミ$${^{*1}}$$の名前の由来は、鳴き声が油で何かを揚げている時の音に似ている$${^{*2}}$$かららしい。知らなかった。翅や身体の色が茶色いので、「何となく油の色の様な」と言う感覚があったが、鳴き声が「油で揚げる音」というのは思いもよらなかった。なお、私の感覚通りで油色が語源$${^{*3}}$$と言う説もある。

 名前の由来が油で揚げる音からというのは、何となくこじつけで民間語源説$${^{*4}}$$の様な気がしてならない。「アブラゼミ」と呼ばれる様になったのはいつ頃からか。よく判らないが、明治以降のことなのか。中国で作られた薬草学の本「本草綱目$${^{*5}}$$」の和訳版「本草綱目啓蒙$${^{*6}}$$」という本がある。これは小野蘭山$${^{*7}}$$によって江戸時代後期に著された。この中にアブラゼミのことと考えられる記述がある。アブラゼミの別名である「アカゼミ」「サトゼミ」「クロゼミ」という言葉は出てくる$${^{*8}}$$が、「アブラゼミ」という呼称は出てこない$${^{*9}}$$ようだ。

 明治時代後期に著された「日本千虫図解$${^{*10}}$$」では、「アブラゼミ」と言う項目$${^{*11}}$$が出てくる。ただし、名前の由来等は一切書かれていない。揚げ物料理は昔からある$${^{*12}}$$ので、明治時代よりも前に鳴き声で庶民が油の音を連想する事もあるかもしれないが、「アブラゼミ」という言い方は何となく明治以降の様な気がする。明治時代の辞書「言海$${^{*13}}$$」のアブラゼミの項目には「あきぜみニ同ジ」とある。アキゼミを見ると「蝉ノ一種、形、大クシテ翅、赤褐ニシテ透キトホラズ、秋ノ半ニ、晩ニ當リテ多ク鳴ク。アカゼミ。アブラゼミ」となっている。つまり言海$${^{*14}}$$が編纂された頃はアブラゼミよりも「アキゼミ」の方が一般的な呼称だったと言える。それが何故か現代では「アブラゼミ」と言う呼称が一般的になっている。もしかしたら「アブラゼミ」は明治時代に作られた学術用語で、これが学校の教科書などに掲載される様になり一般化したのかもしれない。明治の学者が何故「アカゼミ」「アキゼミ」をわざわざ「アブラゼミ」と呼ぶようになったのかは判らない。「アカゼミ」「アキゼミ」では特徴がはっきりしないので別名を考えた結果、油虫$${^{*15}}$$の翅の色になんとなく似ている$${^{*16}}$$ので「アブラゼミ」としたのだろうか。だとすると鳴き声が油で揚げている音に似ていることからと言うのは俗説になる。

*1 aburazemi.jpg
*2 アブラゼミ・油蝉 - 語源由来辞典
*3 三鷹市 |第10回 アブラゼミ(油蝉)
*4 20051118 へちまの語源
*5 博物誌発展のきっかけ―17世紀 | NDLギャラリー | 国立国会図書館
*6 生命の科学 小野蘭山著、「本草綱目啓蒙」 1829年(文政12年)
*7 第1章 江戸博物誌学の歩み | 描かれた動物・植物 小野蘭山関係資料
*8 昔の茨城弁集/茨城の虫・昆虫・節足動物・軟体動物
*9 本草綱目啓蒙. 巻之1-48 / 小野蘭山 口授 ; 小野職孝 録
*10 松村松年 まつむら・しょうねん
*11 nihonsentyuuzukai.gif 日本千虫図解
*12 天プラの科学十二章
*13 20070311 包丁
*14 博物館だより - 一関市役所 博物館だより 11 現代の国語辞書の原点 『言海』と『大言海』
*15 20090707 ラーメンを食べるときの作法
*16 名古屋市:ゴキブリ-台所のオジャマ虫を退治しましょう-(暮らしの情報)

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