20030307 左右の不思議
鏡に映る像はなぜ左右が入れ替わってしまう$${^{*1}}$$のか。左右は入れ替わるのにどうして上下は反対にならない$${^{*2}}$$のか。
鏡に物や自分を映すと言うことはどういうことか。太陽や照明の光が自分にあたりその光が散らばって鏡に当たる。光の一部は鏡に反射して目に入る。鏡に反射して目に入る光と自分に当たり散らばって直接目に入る光とが同じように見えてしまうので、光が鏡に反射した様には見えず「鏡の向こうから光が来た」と錯覚してしまう。つまり鏡の向こうに自分とそっくり同じ物が、鏡を境にしてもう一人の自分がこちらの方を向いてたたずんでいる様に見える。
例えば、視点が自分の顔にあるのではなく、自分の背中のもう少し後ろの方の空中にあるとする。その視点から鏡の前に背中を向けて立っている自分が見える。そして鏡の中にはこちらの方を向いて立っている自分が見える。これはつまり鏡に映すと言うことは「前後を入れ替える」ということに他ならない。
立体物で前後が入れ換わるというのは判りにくい。紙に書いた文字を思い浮かべると分かりやすい$${^{*3}}$$。文字を書いた紙を持って鏡の前に立ってみる。鏡には文字が鏡文字$${^{*4}}$$になって映っている。同時に紙の裏からも文字が透けて見える。鏡の文字と透けて見える文字は全く同じになっている。左右が入れ替わっているのではなく、紙の裏表、前後が入れ替わっている$${^{*5}}$$のである。
では、左右が入れ替わって見えてしまう理由は何か。これは左右の定義による。実はどちらが左でどちらが右という物理的な定義はない。心臓がある側の手、通常、茶碗を持つ手が左手$${^{*6}}$$で、その反対が右手である。左は左手のある側、右は右手がある側である。これが「右」と「左」との取り決めである。
鏡が光を反射したり、その光が目の網膜$${^{*7}}$$を刺激するという物理現象、物理学で使われる法則や定義などと「左右の取り決め」とは何ら関係がない。左手で茶碗を持って鏡の前に立つと鏡の向こうには右手で茶碗を持つ像が映し出されるので左右が入れ替わったことになるだけである。だから茶碗を持ったまま寝ころんで鏡に映しても左右が入れ替わったと思ってしまうだろう。
これは鏡の像が自分とそっくり同じ形をしているので、心臓も同じように左にあるはずなのに、心臓がある側の反対の手で茶碗を持っていると思ってしまうからある。鏡の中の住人$${^{*8}}$$にとって「心臓がある側の手」が「左手」という定義のはずだから、左右の反転はない。同様に「頭がある方が上」と決めているので上下反転もない。
*1 鳥居 寛之 のホームページ 鏡はなぜ左右反対に映るのか
*2 もの知り百科・Q&A 鏡に映った像は左右反対になるのに、上下はなぜ反対にならないのですか。
*3 左右の理屈 ガードナーの問題定義(ママ)
*4 20020323 救急車
*5 左右の理屈 訪問者の説明(1)
*6 20030227 左利き
*7 20000828 目玉
*8 Project Sugita Genpaku Through the Looking Glass: Japanese
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