20021031 スモーキングモンキー(2)
2年半以上前にスモーキングモンキー$${^{*1}}$$という玩具を買った。
プラスチック製の高さ3cm程度の大きさの猿の人形$${^{*2}}$$で、口の所に小さな穴が開いている。猿は胡座(あぐら)をかいて腕を組み右手は口元でタバコを人差し指と中指とで挟むような仕草になっている。何故か知らないが、猿の目はカッと見開いている。
口に付属のタバコを差し込み火を付けると煙が出てくる。するとこのタバコの火種から出てくる煙が輪っかになる$${^{*3}}$$のである。
何故輪っかになるのか見当が付かなかった。玩具が入っていたビニール袋を留める二つ折りの厚紙$${^{*4}}$$に「Made in Japan PAT No.465031」と書いてあるので、特許が登録されているようだ。特許庁の特許電子図書館$${^{*5}}$$でその内容を調べれば原理が書いてあるはずである。買った時に調べた時はこの特許番号の文献はまだ電子化されていないと書いてあった。そして2年半経過した今、調べてみてもまだ電子化されていないと書いてある。
仕方がないので自分で考えてみた。
猿にタバコをくわえさせなくても煙は輪っかになることから人形には仕掛けはなく、タバコ自体に仕掛けがある。タバコの構造は何か松ヤニ$${^{*6}}$$の様な樹脂が薄い紙で巻いてあるだけだ。
火を点けて炎は吹き消す。すると線香やタバコのように火種が残り、そこから煙が出てくる。最初は煙は輪っかにならない。暫くすると輪っかになりだす。
煙が輪っかになる条件は何か。実際のタバコでは口を丸くして煙を含んだ息を適当な速度で吐き出すと口の周りの煙の速さとその内側の煙の速さの差でドーナツ状の煙になる。丁度長い靴下をくるくると巻ながら脱ぐような感じである。これをやるには煙の小さな塊を口から出すようにするのがこつである。と思う。私はタバコを吸わない。しかし輪っかを作ることは出来る。冬の寒い日に白い吐く息でドーナツを作ることが出来る。タバコも白い息も多分同じであろう。
これらの現象はカルマン渦列$${^{*7}}$$の渦の一つ一つができるのと同じ原理であろう。流れの速い空気の塊の後ろに周りの空気が回り込んでドーナツを作る$${^{*8}}$$と思われる。煙を長く吐くとうまくドーナツ状にならない。これは煙を長く吐くと周りの空気が回り込めないからだろう。息は何時かは途切れるので煙の最後はドーナツが出来そうだが、出来ない。煙の最後の方はその速さが遅くなっているから空気が回り込まないのである。
それではスモーキングモンキーのタバコはどうやって煙をドーナツにするだろう。タバコの中の樹脂とそれを包む紙との燃える速さの差が重要である。よく見ると中の樹脂は紙よりも燃え方が速い。もしかしたら本当に松ヤニ$${^{*9}}$$なのかも知れない。
中の樹脂が紙より速く燃えるので、火種が進行するとまだ燃えていない紙の筒の中で空気の供給が少なくなり樹脂の燃え方が遅くなる。次に紙の火種が遅れて樹脂の火種に近づくと、紙の灰を通して空気の供給が増え、また樹脂が速く燃え出す。樹脂が良く燃えれば沢山煙が出る。煙は筒状の紙の灰から勢いよく出る。ある程度燃えると空気が遮断され樹脂の燃え方が遅くなり煙の出方が急に減る。急に煙が途切れるので輪っかが出来る。紙の火種が追いつくと空気の供給が始まり、また樹脂が燃えだして煙がでる。写真をよく見ると紙の灰の筒から勢いよく煙が出ている$${^{*3}}$$のが判る。そして火種の明るさも強弱を繰り返している。
この玩具に火を点けた時、樹脂は燃えやすいので炎を出して燃えている。注意しなければならないのはこの炎を吹き消さないと煙が出ないことである。説明書$${^{*10}}$$にもちゃんと書いてある。輸出用なのか理由は定かではないが、英語で書いてある。
輪っかとは関係ないけど、中に入っていた猿の人形の顔$${^{*3}}$$とこの厚紙の猿の顔$${^{*4}}$$とが全く違う。ニホンザルに似ている絵の方が味わい深い。猿の腰元に大黒袋$${^{*11}}$$みたいな丸が書いてある。その丸の隅には「¢(セント)$${^{*12}}$$」と書いてある。つまり1ドル以下で売られていたのだろう。
*1 20000218 スモーキングモンキー
*2 スモーキング・モンキーの不思議!
*3 smoking.jpg
*4 trick_smoking_monckey.jpg
*5 特許庁 特許電子図書館トップページ
*6 松脂(ロジン)を訪ねて
*7 20020101 カルマン渦
*8 空気砲のやり方
*9 2.松脂蝋燭(まつやにろうそく)
*10 rick_smoking_monckey2.jpg
*11 讃岐の引札 No.99 大黒
*12 Vintage Restorations 1 '96