20030310 モンテカルロ法
モンテカルロ法$${^{*1}}$$と呼ばれる計算方法がある。「モンテカルロ$${^{*2}}$$の法律」という意味と考えがちだが、違う。
モンテカルロ法は乱数を使った統計学的な抽出方法によって数学問題を解く方法で、Ulam$${^{*3}}$$という人がロスアラモス研究所$${^{*4}}$$で考え出した。
何がきっかけで考え出されたのだろうか。数学的に答えが決まっている筈の問題を、乱数$${^{*5}}$$を使って解くというのだから逆転の発想の典型だ。円周率$${^{*6}}$$を求める方法として「ビュフォンの針$${^{*7}}$$」というのがある。沢山の針を平行線が何本か書かれた紙の上にばらまいて、紙に書かれた平行線に重なった針の本数を数えることにより円周率を求めることが出来る。円周率という確定した値を針と平行線とが何本重なるかという偶然から導き出すのだからモンテカルロ法の一種になる。ビュフォン$${^{*8}}$$の方が遙かに古いのでこちらが起源なのかも知れないが、これがきっかけでモンテカルロ法が生まれたのかどうかは判らない。
正方形に内接する円を描き、その正方形の中にでたらめに点を打って、その点の総数と内接する円の中に打たれた点の数との比率から円周率を求める$${^{*9}}$$。これはモンテカルロ法の一例である。点の数を無限に増やせば、正方形と円との面積の正確な比を求めることになるので、点をある程度間引いても面積の比が大体解ってくる。点を増やせば増やすほど本当の値に近づくのは「大数の法則$${^{*10}}$$」で保証されているので、ある程度、点を増やせば実用的な解が得られることになる。
正方形の中にある図形が円ではなく、もっと複雑な数式で表される曲線$${^{*11}}$$でも同じ様な操作で面積比が得られる。
「モンテカルロ法$${^{*12}}$$」という言葉はモナコ$${^{*13}}$$のモンテカルロが由来$${^{*14}}$$らしい。乱数による偶然で真値を「当てる」ということだろう。
ところがこんなページ$${^{*15}}$$を見つけた。モンテカルロ法の説明$${^{*16}}$$の一部である。導入のところに「賭ばくの国モナコにモンテカルロというところがある。しかしここでいうモンテカルロとは何の関係がない」と言い切っている。言い切るのは清々しいが、もう少し言葉に対する思いやりがあれば、このような間違いを書いてしまうようなことはなかっただろう。
それにしてもこのページの作者は「何故、モンテカルロ法という名前なのか」と疑問に思ったことはないのだろうか。
*1 モンテカルロ法
*2 Monte Carlo Las Vegas Resort Hotel and Casino
*3 Stanislaw Marcin Ulam
*4 Los Alamos National Laboratory | Home
*5 20000327 音訳
*6 20030207 The Joy of π
*7 20001121 ビュフォンの針
*8 一般と個別の博物誌 / ビュフォン
*9 あっしーのぺーじ モンテカルロ法による円周率の計算
*10 放課後の数学入門 大数の法則
*11 Cardioid -- from MathWorld
*12 Computer Programing: Random number 1
*13 モナコ政府観光会議局
*14 Monte Carlo 2. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*15 http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/~ebsa/miyatake01/pdf/ch01.pdf
*16 統計科学のための電子図書システムのWebページ モンテカルロ法