20010724 とり御飯
駅弁は電車で旅行する時に旅の楽しみを増幅させる品目の一つである。原作 久住昌之$${^{*1}}$$ 作画 泉晴紀「ダンドリ君$${^{*2}}$$」という漫画で電車で弁当を食べる「段取り」を主題とした物があった。これを読むと駅弁には普通の食事とは違う楽しみ方があることが分かる。
名古屋駅に「とり御飯$${^{*3}}$$」という駅弁がある。名古屋と言えば名古屋コーチン$${^{*4}}$$である。弁当の鶏肉に名古屋コーチンを使っているかどうかは判らないが、この弁当は滅法うまい。因みに名古屋地方では鶏肉全般を「かしわ」という。本来、黄鶏(かしわ)$${^{*5}}$$のことを指すのだが、ブロイラー$${^{*6}}$$でも「かしわ」という。
弁当の御飯は鳥そぼろ飯である。醤油と砂糖などで味付けした茶色の鶏肉のそぼろと黄色い卵のそぼろとが味付け御飯の上に綺麗に二色にきちんと分けて乗せてある。これを電車の座席に座りながら綺麗に食べるのは結構苦労する。そういう声が製造者に聞こえたのか、この弁当には箸と「さじ」が付いている。
しかしここでさじを使っていては粋ではない。やはり大人であれば弁当を食べる時は箸を使うべきである。弁当箱の半分に隙間なくぎっしり詰められた御飯の上にはそぼろが一面に乗っている。これらのそぼろを電車の床や膝の上に落とさずに箸で食べるにはそれなりの「段取り」が必要である。
まず初めに弁当箱の角の部分にあるそぼろを箸で中の方に寄せて御飯を露出させる。そして箸一掴み分の御飯を食べる。弁当箱の角に箱の底が見えるぐらいの隙間ができれば、後は少しずつ山を崩すようにそぼろと御飯粒とをまぶしながら一箸一箸口にもっていく。こうやって食べればそぼろが箱の外に出ることはなくなる。
ただし最後には飯粒より細かいそぼろがどうしても残る。これを箸で時間を掛けてちまちま食べるのが、またこの弁当の楽しい味わい方である。大人は絶対にさじを使ってはいけない。
*1 Qusumi's Homepage
*2 泉昌之 (作・久住昌之/画・泉晴紀)
*3 MATSUURA/TORIGOHAN
*4 名古屋コーチン普及協会フレームindex
*5 かしわはどんな植物?Weblio辞書
*6 ブロイラーの経営形態