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20050406 サンプ

 自動車に使われるエンジンにはエンジンオイル$${^{*1}}$$が入っている。このエンジンオイル$${^{*2}}$$は、作動時には高速で金属と金属とが擦り合わされるので摩耗や発熱を抑えるための潤滑、オイルを循環させることによってエンジンの熱い部分の冷却、各部品の錆の防止、隙間に入り込んで密閉する、燃焼室で発生した燃焼カスなどを洗い流すといった役目がある*3$${^{*3}}$$。

 エンジンオイルの循環方法として二つの方式がある。ウェットサンプ方式とドライサンプ方式とである。一般の自動車の殆どはウェットサンプ方式を採用している。

 ウェットサンプ方式$${^{*4}}$$とはオイルを一時的に溜めておくオイル溜めがエンジンと一体化している方式だ。オイル溜めはオイルパンと呼ばれている。エンジンの一番下に取り付けられている。エンジンが止まれば重力でオイルパンにオイルが集まってくる。エンジンが動き出すとオイルパンに入っているオイルはオイルポンプによって循環される。オイルポンプではなくオイルパンのオイルを回転するクランクでオイルを引っ掻いて$${^{*5}}$$跳ね上げさせて循環させる方式$${^{*6}}$$もある。

 ドライサンプ方式$${^{*4}}$$はオイルを一時的に溜めるオイル溜めがエンジンと別体になっている方式である。エンジンにはオイルを回収するための底の浅いオイルパンが付いているが、ここからオイルが回収されオイルタンクに運ばれ、そこから再びエンジンに送られる。エンジンの下で使用する全オイルを溜めているウェットサンプと違い、専用タンクが他にあるので、エンジン自体の高さを低くすることが出来る。高回転型のエンジンではエンジンオイル量が多く必要になりオイルパンの容量を大きくしなければならないが、ドライサンプ方式ならその制約を受けずにエンジン本体の設計ができる。また急激な加減速によってオイルの供給が不安定になることが少ない。専用オイルタンクや回収用ポンプ等が余分に必要なので、製造原価が高くなる。この方式はF-1$${^{*7}}$$などの競技自動車やポルシェ911$${^{*8}}$$、フェラーリ$${^{*9}}$$などの高性能市販車で採用されている。

 「ウェット」とか「ドライ」というのはオイルがエンジン内部に沢山溜まっているかいないかの違いを示している。それでは「サンプ」というのは何か。私はこれを「散布(撒布)」だと思っていた。エンジンの中でオイルを撒き散らして内部を潤滑させるから「散布」$${^{*10}}$$、そしてわざわざ散布をサンプと片仮名で書くのは「竜頭(りゅうず)$${^{*11}}$$」と同じ発想だと思っていた。考えてみると「ウェット散布」というのは変な日本語である。更に「ドライ散布」では何が何だか判らない。

 調べてみると「サンプ$${^{*12}}$$」は英語だった。「sump$${^{*13}}$$」は油溜めという意味だった。

*1 20040515 キャッスルとカストロール
*2 【CAR-MARKET】エンジンオイルの基礎知識と日常点検
*3 【マイカーメンテナンス講座第4回 「季節の変わり目にオイル交換」はなぜ?】ENEOS - 新日本石油 -
*4 Dan's Motorcycle Four Stroke Oil Pump Lubrication
*5 images/077_02l.gif
*6 日本財団図書館(電子図書館) 3S級舶用機関整備士指導書
*7 Yahoo! Formula 1
*8 911 GT3 - 911 - Japan - Porsche Japan KK
*9 EURO GARAGE MONZA_maintenance_engine
*10 splash_lube2.jpg
*11 20010123 ああ勘違い
*12 sumpの意味 - goo辞書 英和和英
*13 sump. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.

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