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20000111 人形師の命
昔の人形は人形師が一体一体に魂を込めて作るので人形師の命も少しづつ削られていくのだ、という伝説があった。だから人形はおいそれと捨てられないし、不思議な魅力があるとされる。フランスの人形師で有名なジュモー$${^{*1}}$$は一体を作る毎に魂をすり減らしたとブラック商会変奇郎$${^{*2}}$$が言っていた。
現代の大量生産品で設計にかなりの時間や人手がかかる複雑なもの、例えばLSI(大規模集積回路)やハイテク電化製品、自動車などの日本の設計開発技術者や生産担当者は大抵命をすり減らしながら薄給で働いている。なのに出来上がった製品は昔の人形師が作った人形のように生きているみたいだとか魅惑的だというような評価はなされない。ためらいもなく捨てられることが多い。それは何故か。
大量生産をすると作った人の製品に込められた魂は薄められてしまい、出来上がったものには殆ど残っていないのだろう。怨念や魂も物理的に濃度が薄くなったりすることがこれで証明されているかもしれない。
*1 Long Face Jumeau
*2 少年チャンピオン辞典