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20090728 全周夕焼け(2)

 皆既日蝕時の全周夕焼け$${^{*1}}$$の続き。録画しておいた硫黄島近傍の洋上での様子を見てみると、皆既日蝕になると水平線が夕焼けの様に赤くなっている$${^{*2}}$$。全周三百六十度がこの夕焼け状態である。直感的には月の影$${^{*3}}$$の境目は、夜と昼との狭間である夕暮れ時または朝方と同じなので空が赤くなると思われる。番組で中継をしていた解説者もそのような説明の仕方であった。

 しかしこれは少し考えてみるとおかしい。月の影の境界で見えるのなら、屋根でできた影でも同じだろう。真っ昼間の家の中から外を眺めても家の影と日向との境目が赤く見えることはない。自分からその境目までの距離がもっと必要なのか。それでは山を貫く真っ直ぐで長いトンネルがあれば、トンネルの端から覗くと反対側の出口に見える地平線や水平線は赤くなるのだろうか。

 夕日が赤い理由$${^{*4}}$$は、太陽の光が大気中を通過する距離の長さに関係する$${^{*5}}$$と説明される。昼間の太陽が高い時は、太陽光に含まれる青い光が大気中の空気分子に散らされて空全体が青く見える。太陽光に含まれる赤い光は散らされ難いので、ほぼ直接目に入ってくる赤い光によって太陽の周りの空に色が付く程度である。夕日や朝日の光は大気の層に対して斜めになるので、その分大気の層を通過する距離が長くなる。長くなると赤い光も殆ど散らされてしまう。青い光も同じ様に散らされているが、赤い光よりも先に散らされてしまっているので、目に入ってくるのは後でどんどん散らされる赤い光ばかりになる。これが夕焼け朝焼けの赤い理由である。

 空が赤くなるのは、太陽光が長い距離の大気の層を通過する$${^{*6}}$$から、と言う説明だと皆既日蝕で現れる全周夕焼けはどう説明すればいいのだろうか。皆既日蝕の時は、そうでない時と太陽の位置は殆ど変わらない。太陽光が大気の層を通過する距離は全く変化していない。なのに月の影に入った途端、周りが夕焼けの様になってしまう。

 昼日中でも夕焼けや朝焼けは常に起こっているのである。ただ、日中は空が青く明るいのでそれが見え難いだけで、水平線ではいつも弱い夕焼け朝焼けが全周で起こっているのである。地球は丸いので自分のいる位置から水平線に向かうにつれて、少しずつ太陽光が通過する大気の層の距離が増える。ということは赤い光が水平線付近では少し散らされているのである。快晴のとき地平線や水平線を見ると少し白んで見える$${^{*7}}$$。これは太陽光に含まれる青色以外の光も少し散らされているからだ。皆既日蝕時、月の影で上空が暗くなると、常に起こっている水平線のごく弱い夕焼け朝焼けが見え出してくる。これは月の大きさと地球の大きさとの比に関わってくる。月の影がもっと小さければ、屋根の影と同じで皆既日蝕でも夕焼け朝焼けは見え難いだろう。地球がもっと大きく平面のようであったら水平線の彼方のどこまでいっても太陽光が通過する大気の層の距離が同じなので、そもそも昼間の弱い全周夕焼け朝焼けは起きないことになる。

*1 20090727 全周夕焼け
*2 IMG_0552.jpg ※日本放送協会の中継番組の録画映像を液晶モニタに映し出し、それをデジタルカメラで撮影したもの
*3 2009年7月22日皆既日食の情報:国立天文台 mechanism1.jpg
*4 20040716 空の赤
*5 空はどうして青く、夕焼けはどうして赤いのですか?
*6 8月16日放送「夕焼けは、なぜ赤いの?」
*7 Blue Sky and Rayleigh Scattering Sky Saturation and Brightness

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