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20100301 英語の月名のずれ
英語の月名は何故ずれているか。読者の方から掲示板$${^{*0}}$$に話題提供の書き込みがあった。ずれていると言うのは九月September、十月October、十一月November、十二月Decemberのそれぞれ最初の部分はラテン語の数詞$${^{*1}}$$ 7 septum、8 octo、9 novem、10 decem$${^{*2}}$$が基になっている。つまり九月から四ヶ月分の月名が二ヶ月ずつずれている。
書き込みによると、ずれた原因として(1)ジュリアス・シーザーとその養子のアウグストゥスが自分の名前をねじ込んだ(2)昔は一年の最初がMarchだったから元々二月ずれている、という二つの説に辿り着いたらしい。果たしてどちらが尤もらしい理由だろうか。私は、七月July、八月Augustの語源がそれぞれシーザーとアウグストゥスの名前からと聞いたことがある。この二つの名前を月名に入れるため七月以降をずらしたと言うのも聞いたことがある。
まず英語の月名の語源を調べる。一月January$${^{*3}}$$は一年の始まりとしてヤーヌスJanus$${^{*4}}$$に捧げられる月と言う意味らしい。英語化したのは1400年頃。二月February$${^{*5}}$$はラテン語の「浄めの月februarius mensis」が語源になっているようだ。februariusの語源はよく判っていない。古代イタリアのSabine$${^{*6}}$$人の言葉と言われている。最初に英語に入って来たのは1200年頃。三月March$${^{*7}}$$はラテン語の「軍神マールス$${^{*8}}$$Martius」から。1200年頃に英語化。四月April$${^{*9}}$$はラテン語の「ヴィーナスの月Aprilis$${^{*10}}$$」から。Apprileという綴りが英語に現れたのは14世紀後半。五月May$${^{*11}}$$はラテン語の「Mayの月maius」が語源で、Mayとはローマ神話の大地の女神Maiaから。英語に登場したのは12世紀頃。六月June$${^{*12}}$$はラテン語の「Junius」から。Juniusは結婚のローマ神話の女神ユーノーJuno$${^{*13}}$$が語源。英語に登場したのは12世紀頃。七月July$${^{*14}}$$はこの月の時期に生まれたJulius Caesarの名前に因む。ラテン語のJuliusから。英語化したのは11世紀頃。八月August$${^{*15}}$$はAugustus Cæsar$${^{*16}}$$に因む。ラテン語のAugustusから。Augustusは称号で「尊敬すべき$${^{*17}}$$」と言う意味。11世紀頃より。
九月September$${^{*18}}$$はラテン語のラテン語のSeptemberから。十月October$${^{*19}}$$はラテン語のOctoberから。十一月November$${^{*20}}$$はラテン語のNovemberから。十二月December$${^{*21}}$$はラテン語のDecemberから。ラテン語の数詞の後の「-ber」はラテン語の形容詞的語尾の「-bris」が元になっているらしい。この四ヶ月の名前が英語に導入されたのは11世紀頃だろう。
これら英語の月名は10~12世紀頃に英語として登場している。この頃のロンドン$${^{*22}}$$の暦は、ユリウス暦$${^{*23}}$$の筈だ。暦の方式に変更がないので、月名がずれる機会がない。それに現在使用されている英語の月名は全て本来の英語以外からの外来語である。既にずれて出来上がった月名をそのまま英語に取り入れているだけだから、英語において月名のずれの発生は全く起こっていないことになる。
*0 20091011 掲示板のURL(2)
*1 ラテン語の数体系
*2 Latin numerals: Numbers with English Equivalents
*3 Online Etymology Dictionary
*4 Janus Clipart
*5 Online Etymology Dictionary
*6 Tarpeia and the Early Days of Rome — ALL THINGS VESTA
*7 Online Etymology Dictionary
*8 Raia Images Index III mars.jpg
*9 Online Etymology Dictionary
*10 JSTOR: The American Journal of Philology, Vol. 62, No. 2 (1941), pp. 199-206
*11 Online Etymology Dictionary
*12 Online Etymology Dictionary
*13 Online Etymology Dictionary
*14 Online Etymology Dictionary
*15 Online Etymology Dictionary
*16 Nicolaus of Damascus, Life of Augustus
*17 Online Etymology Dictionary
*18 Online Etymology Dictionary
*19 Online Etymology Dictionary
*20 Online Etymology Dictionary
*21 Online Etymology Dictionary
*22 London History
*23 改暦(ユリウス暦からグレゴリオ暦へ)