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20031127 火炎注射器(2)

 空気を急に圧縮すると空気は熱くなる$${^{*1}}$$。この現象は圧縮する空気の量に関係しているのだろうか。

 試験管の中で空気を急に押し縮めると試験管の中の綿が燃える$${^{*2}}$$ぐらい温度が上がる。木綿の発火点は500℃ぐらい$${^{*3}}$$だからそれ以上の温度になっていることになる。もっと細い試験管でも同じように温度は上がるけど、圧縮される空気の量が少なくなるので温度が上がってもすぐ冷えてしまうだろう。従って温度は上がるが火は付きにくくなる。

 試験管を太くしたらどうなるか。やはり同じように温度は上がる。これを利用したのがディーゼルエンジン$${^{*4}}$$である。ディーゼルエンジンは試験管の代わりに鉄で出来たシリンダーの中に空気を入れて、それをピストンで押し縮める$${^{*5}}$$。ピストンで圧縮された空気は高温になっている。そこへ軽油の霧を噴射すると軽油が発火して燃焼し高温となった燃焼ガスがピストンを押し戻そうとする。これがディーゼルエンジンの動力となる。

 自動車ならシリンダーの直径は数ないし十数cm$${^{*6}}$$だが、船舶用$${^{*7}}$$ならもっと大きくなる。この写真$${^{*8}}$$のようにシリンダーの直径が1mぐらいあってその中に人間が入ることが出来る。このシリンダーを十数本並べて巨大な力を生み出す。

 試験管一本をただ大きくしただけの機械もある。建設機械の杭打ち機$${^{*9}}$$だ。最近この杭打ち機を見かけることがなくなったような気がする。ディーゼルハンマー$${^{*10}}$$と呼ばれているらしい。

 鉄の塊のピストンが自重でシリンダーの中の空気を圧縮して高温にする。自重で空気を圧縮する時に杭を打つ。そこへ軽油の霧を噴射して発火させ燃焼させる。燃焼ガスはピストンを押し上げる。そしてまたピストンはシリンダーの中の空気を圧縮する$${^{*11}}$$。これの繰り返しである。

 試験管をいくら太くしても空気は圧縮すれば高温になるのだから燃料と空気とさえあれば、いくらでもディーゼルエンジンは大きくすることが出来そうである。地球がすっぽり入るぐらいのシリンダーを持ったディーゼルエンジンでも動きそうだ。そう考えるとディーゼルエンジン$${^{*12}}$$というのは自然の法則に非常に忠実な発明であるような気がしてきた。

*1 20031125 空気で湯を沸かす給湯器
*2 20031126 火炎注射器
*3 物質の引火点・発火点
*4 日本財団図書館(電子図書館) 2級舶用機関整備士指導書(平成9年度)3. ディーゼルエンジンの作動原理
*5 クリーンディーゼルの魅力とは? | Ancar Channel
*6 JAMA - より環境保全をはかるために ■ディーゼルエンジンの排出ガス低減新技術例
*7 Ship Technology - Main engine power is provided by a Korean-built MAN B&W 7S60MC-C diesel engine, with a maximum continuous rating of 21,490bhp at 105rev/min.
*8 The marine diesel prime mover. - The two stroke plant
*9 composite pilings, concrete piles installation installations01_lg.jpg
*10 Specs for I-80 Diesel Hammer
*11 Diesel Hammer Operation
*12 ISUZU:ディーゼルエンジンの歴史

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