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20040131 企業と研究者

 工業製品を製造する企業において重要な要素の一つに時間がある。他社に先駆けて自らの優れた商品を世の中に送り出すことが利益を得ることにつながる。

 中村修二氏$${^{*1}}$$の青色発光ダイオード訴訟$${^{*2}}$$の判決が出た。これに対し、中村氏の功績は十分認められるが、青色発光ダイオード研究への投資は会社が行ってきたものなので、決して中村氏一人の功績ではない、というような意見も出ているだろう。

 量産化が非常に難しいと言われていた青色発光ダイオードの開発に投資の判断を下した会社の存在は大きい。それに青色発光ダイオードの開発は中村氏でないとできなかった訳ではないだろう。どんな発明発見でもその人でないと出来なかったということは、ないはずである。力学の法則や相対性理論はニュートンやアインシュタインでないと発見できない、というわけではないだろう。彼らが出現しなくても他の誰かがいずれ発見する。

 青色発光ダイオードの開発は中村氏でなくてもできる。しかし当時、開発できたのは中村氏しかいなかった。会社は、その中村氏に投資して青色発光ダイオードを開発したのである。中村氏特有の技能を使わなければ、現在の青色発光ダイオードの商売ができなかったはずだ。

 会社は中村氏を使って「時間を買った」のである。通常、企業が買うことができる時間は、高性能の工作機械だとか事務処理コンピュータなど分かりきった仕事に掛かっている「時間」しかない。これらは金があれば誰でも買える。しかし発明や開発に関して言えば、必要な時に優れた人材を手に入れないと時間を買うことはできないのだ。

 人材を集めるには本来、多大な費用が必要だったはずだ。たまたま会社にいた人材を社内規定に従って有効活用した、という説明は虫がよすぎる。中村氏は訴訟を通じて、企業の研究者の扱いの見直しを世に問いたかったのだろう。

 投資家や経営者は研究者を利用して多額の利益を得ることができたのである。当然、中村氏はそれ相応の報酬は受け取る権利はあるし、会社も支払うべきであろう。それをぐちぐち言って出し渋るのはケチ以外何者でもない。それに不遜である。

 何度も書くが、この青色発光ダイオード開発に関しては、当時は中村氏しかできなかったのである。大ヒット商品の図面を書く程度とはわけが違うのである。その辺りを理解しなければ、要求している報酬金額が高いか安いかは判断できないだろう。

 そういえばいろいろ買い込んだ発光ダイオードを使ったキーホルダ$${^{*3}}$$に使われている発光ダイオードは皆、日亜化学工業$${^{*4}}$$製である。

*1 武田賞フォーラム 中村修二
*2 Google 検索: 青色発光ダイオード 訴訟 中村修二
*3 20040116 キーホルダ(5)
*4 NICHIA Corporation

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