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20021009 慣らし運転伝説

 新しい自動車を買った時には慣らし運転をしないとエンジンがうまく回らなくなると言う。

 今回、買った自動車の説明書にも慣らし運転をしてくれ$${^{*1}}$$と書いてあった。この自動車の慣らし運転とは最初の走行距離2000km程度をエンジン回転数毎分4000回転以下で、しかも4000回転まで使用領域を徐々に広げながら慣らして欲しい、と書いてあった。つまり走行距離の短い最初のうちは4000回転までは使わずに、距離が2000kmに近づくに従ってエンジンを回す回転数を上げて4000回転まで満遍なく使うようにしろということである。

 それにしても購入当初にある程度エンジンの回転数を上げておかないと、その後エンジンの回転数がうまく上がらなくなると言う話しを聞いたことがあるが、これは一体どういうことであろう。上記の慣らし運転とは事情が違うと思われる。

 かなり前に知人とこれについて話したことがある。確か前の自動車を買った時だから10年以上前である。普通の自動車エンジン$${^{*2}}$$にはピストンが付いている。ピストンはエンジンの筒の中で非常に素早く上下を繰り返している。ピストンも筒も金属で出来ているのでいくらエンジンオイルで潤滑していても少しずつ摩耗してくる。低い回転数で使っているとエンジンのピストンが上下運動が中途半端になって、いざ、高回転で回そうとしてもうまくピストンが素早く上下してくれなくなると、知人は説明してくれた。

 それを聞いて私は「エンジンの回転数が高くても低くても、ピストンが上下を繰り返す位置は同じじゃないのか」と尋ねたら、答えに窮していた。

 エンジンの回転メーター$${^{*3}}$$は、回転数に従って針が行ったり来たりする。デジタル表示ならば数字が増えたり減ったりする。低い回転数であれば、針は途中までしか動かない。高回転になれば針は目一杯まで振れようとする。この動きが「エンジンが回らなくなる」というのを連想させるのではないだろうか。解りきった事であるが、回転メーターはエンジンの回転数を単に針で示しているだけで、エンジン自体の回転能力とは関係ない。低い回転数ばかり指していると回転メータの針の軸に変な癖がついて、針が振りきれなくなると言う現象はあるかもしれない。しかし針が振れないからといってエンジンが回らなくなるわけではない。

 あと、考えられるのはアクセルペダルとエンジンのスロットルバルブやキャブレター$${^{*4}}$$とを繋いでいる紐に変な癖が付くことである。回転メータと同様この紐はアクセルペダルを踏んだり放したりすると引っ張られたり戻ったりする。エンジンの回転数を上げないということはアクセルペダルを余り踏まないということなので紐が途中までしか滑らかにに引っ張られなくなる事もあるかもしれない。

 こうやって考えると「エンジンが回らなくなる」というのはエンジンその物の性能ではなくその周辺の事情ではないかと思いたくなる。本当に紐が原因ならば慣らしにはエンジンをかける必要は全くなくアクセルペダルを踏んだり放したりするのを何度も繰り返すようにすればいいことになる。最近は紐ではなくモータで制御するスロットルバルブ$${^{*5}}$$があるので、紐の滑りの癖ではなくペダルやバルブの回転軸の癖が問題になるかもしれない。

 そもそもエンジンは回せば回すほど摩耗が進行していくので、気密性が低下してエンジンはだんだん速く回転しにくくなるような気がする。

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