20050422 人体の値段
幼少の頃、人の体の成分はどうなっているかを表した漫画が掲載された小学生向けの物知り図鑑などがあった。五寸釘$${^{*1}}$$が何本とか、マッチ棒$${^{*2}}$$が何本かとか、水は何リットルとかの絵が人体と並べて描かれていた。
人体を構成する元素$${^{*3}}$$を示していたのである。これを眺めて人間の体はこういった物$${^{*4}}$$でできているのかと感心した。
最近、web上でこんな雑学ページを見つけた。人体を売ったらいくらになるか$${^{*5}}$$、である。人体を構成する元素を売ったらいくら稼げるかという話であった。おそらく上記のような子供向けの図鑑を見て思い付いたのであろう。五寸釘が何本と説明されていれば、それの値段がいくらかというのを単純に考えてしまう。
だが、これはなんら意味のない雑学である。面白味もない。何が雑学かという定義はないが、少なくとも知識として意味があるのが雑学だろう。
人体を元素に分解してそれぞれの値段を合計することが、なぜ「人体の値段」になるのか。分解した時点でそれは人体ではない。藁しべが大きな屋敷になった$${^{*6}}$$ので「わらしべの値段そのものが百万両だ」と言えるのだろうか。『わらしべの価値が百万両になった』とは言えるだろう。つまり話の展開が論理的でない。
値段が付けられる対象となる物や労働には、それが形成された過程や意味などが背後にある。それらを得ようとする人々の価値判断はその背景に基づいて決められる。同じ様な物や労働でも価値観によって値段が変わってくるのは当然である。それを無視して値段を議論すること自体無意味だ。
人体を分解して得られた元素を全部売却しても一万円にもならないと書かれている。酸素43kgもあれば$${^{*7}}$$、1気圧で3万リットルもある。それが一万円もしないとは考えられない。1リットル1円としても3万円する。とはいっても材料関連は販売する量によって単価が大きく変化$${^{*8}}$$してしまうので何とも言えないが、酸素43kgが一万円しないというのは安すぎるような気がする。
そして最後に一万円もしないのに死亡すると保険金で大金が支払われる、という紋切り型で安直な落ち。
全くもって雑学道を何と心得ているのか。
*1 品木ダム水質管理所
*2 燐寸倶楽部
*3 人体を構成している元素組成
*4 体と金属の関係をご存知ですか?-食品中に含まれる金属の分析-
*5 人体は売ったら、いくら? 2000/01/07
*6 山口銀行:お楽しみコンテンツ>山口むかし話>わらしべ長者(1)
*7 「医療用酸素」-日本医療ガス協会
*8 【楽天市場】さかいや・オンラインショップ:スポーツ酸素
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