見出し画像

20050730 温度の正体(3)

 温度の上限$${^{*1}}$$をどう考えるか。物質を構成する粒子の速度の上限から考えればいいのか。そもそも温度とは何か。粒子の速度で決まると単純に考えて良いのか。

 どうも違うらしい。二つの物の間で何もせずに自然に熱エネルギー$${^{*2}}$$が移動した時、この二つの物の間には温度の「差」があると定義される。何もせずというのは、新たに二つの物にエネルギーを与えずに、という意味だ。しかし初期の温度の定義は経験から編み出されたのだろう。触ると熱い、冷たいで温度の差を捉えた。そのうちこの感覚を数字で表そうと考え、温度計が考案された$${^{*3}}$$。ガリレオ$${^{*4}}$$は熱によって空気が膨張する現象を利用して温度計を作った。これは温度を測定しようとする物と空気との温度差を利用している。つまり熱い、冷たいの延長である。

 十八世紀当時は熱の原因は何か実体のある粒子と考えられていた。それを熱素という。この熱素が物と物との間を移動して温度の差ができると考えられた。温度差は熱素の量の違いと考えられたが、イギリスの科学者ブラック$${^{*5}}$$は、熱容量$${^{*6}}$$や潜熱$${^{*7}}$$の概念を打ち出して熱と温度との違いを明確にした$${^{*8}}$$。温度は熱素の量だけで決まらないということになった。そのうち熱素での熱の説明に矛盾が生じてきた$${^{*2}}$$ので、この考え方は否定された。矛盾の基となった摩擦熱は運動に伴い発生するということから、熱は運動が原因である$${^{*9}}$$と考えられるようになった。更にジュールによって力学的なエネルギーと熱とが等価になる$${^{*10}}$$ことが示された。

 相対論において運動の上限は光速$${^{*11}}$$である。これは速度の上限であってエネルギーに上限があるわけではない$${^{*12}}$$。これで熱の量に上限はないことが判る。それでは温度の上限はどうだろう。熱エネルギーに上限がなければいくらでも温度を上げられるはずだ。ということは温度に上限はないことになる。これで一件落着かと思ったが、そうではないらしい。

 温度は熱の量だけでは決まらない。これは熱素の存在を仮定した場合だけではない。「温度は熱の量だけでは決まらない」というのはブラックが実験的事実から導き出した考え方なので、熱の正体が熱素だろうが粒子の運動だろうが関係ない。温度が熱の量だけで決まらないのであれば、「熱の上限がないから温度の上限もない」とは言い切れない。

 それでは温度差は熱の量と他の何とで決まるか。熱は粒子の単なる運動にも拘わらず、熱が低温から高温へ勝手に移らないと言う経験的な法則$${^{*13}}$$から、温度は物体を構成する粒子がそれぞれ持つエネルギーの分布状態にも依存$${^{*14}}$$すると考えられるようになった。温度差が大きいと言うことは熱の移動が多いことに間違いないが、それに伴う分布状態の変化が大きいとそうでない時よりも温度差が小さくなってしまう$${^{*15}}$$。そうするといくら熱を与えても温度が上がらなくなる場合が出てくる。

 具体的には熱を与えると次々に新しい素粒子が出現する状態$${^{*16}}$$になると温度が上がりにくくなると考えられるようだ。それはどれくらい高温かというととてつもなく高い温度が考えられるらしいが、どれくらいなのかよく解らない。

*1 20050729 温度の正体(2)
*2 科学の歩みところどころ 第3回 熱とは何か
*3 20020527 ガリレオ温度計(3)
*4 20020608 ガリレイ・ガリレイ
*5 Famous Scots - Joseph Black
*6 図(熱容量)
*7 潜熱とは - コトバンク
*8 歴史 ジョセフ・ブラック(1728-1799)
*9 Nagoya City Science Museum 熱の正体 熱エネルギーに関する基本法則 Relation between Heat and Energy
*10 Making the Modern World - Icons Of Invention - Science - 1820-1880
*11 国立科学博物館-宇宙の質問箱-宇宙旅行編
*12 質問集
*13 熱力学第二法則とは - コトバンク
*14 物理Tips:温度とは何ぞや?
*15 物理Tips:最高温度はあるか?
*16 スーパーストリング理論

いいなと思ったら応援しよう!