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20050326 尾州不二見原(2)

 先日書いた$${^{*1}}$$北斎の「尾州不二見原$${^{*2}}$$」について弟から指摘があった。名古屋から富士山は地形的に絶対に見えないはずだというのだ。富士山と名古屋との間には3000m級の山々が連なる赤石山脈$${^{*3}}$$があるので、名古屋界隈からは遮られて見えないらしい。

 名古屋よりも西にある伊勢から見える$${^{*4}}$$のは、富士山から伊勢までの間に高い山がないからである。

 地図を見てみると富士山と名古屋との間には2000m以上の光(てかり)岳$${^{*5}}$$や大無間(だいむけん)山$${^{*6}}$$がある。これらの山は名古屋から大体110kmのところにある。富士山は そこから更に60km東にある。

 山が高ければ高いほど遠くから見える。地球が丸いことを考えて計算すると富士山がぎりぎり見える距離はだいたい220km$${^{*7}}$$になる。計算方法$${^{*8}}$$は

$$
(山が見える距離: m) = 3569×\sqrt{(山の高さ)}
$$

となる。富士山以外、地球に凸凹がなくのっぺりしていれば、富士山と名古屋との間の距離が170kmなので十分見えるはずだが、途中に山があると遮られて見えない。ではどのくらいの高さの山があると富士山が隠れてしまうか。

 光岳と大無間山とがあるのは名古屋から110kmの地点である。この地点に名古屋からぎりぎり見える高さの山があると後ろの富士山が重なって見えなくなる。上の式から山の高さを逆算すると、その高さは950mになる。光岳、大無間山どちらも2000m以上あり、連なる尾根も2000m以上はある。これでは富士が見えるはずない。更に光岳と大無間山との手前45kmには標高1415mの愛知県で一番高い茶臼山$${^{*9}}$$があるので、もう全然見えない$${^{*10}}$$。

 では「尾州不二見原」で見えている富士山は一体何なのか。光岳の隣にある標高3013mの聖岳$${^{*11}}$$ではないかと言われている$${^{*12}}$$らしい。

*1 20041210 尾州不二見原
*2 Hokusai: Bishu Fujimigahara
*3 南アルプス国立公園
*4 運がよければ富士山が見える
*5 南アルプス南部光岳 -中部森林管理局-
*6 寸又峡から大無間山・小無間山
*7 富士山が見える理論限界距離
*8 地球は丸いを実感する(その4)
*9 :::e-村発見!茶臼山:::茶臼山山麓観光公式HP
*10 FYAMAP-富士山の見える駅
*11 信州山岳ガイド「聖岳」
*12 切手で巡る美術の旅:東京藝術大学大学美術館

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