20010522 温度の単位(2)
温度の単位の続き$${^{*1}}$$。アルコール温度計の目盛りの長さが温度の単位にはなり得ないので、普遍的な温度を定義するのに熱力学を用いる。これは1848年にケルビン$${^{*2}}$$が提唱した。熱を完全に仕事に変えることが出来る仮想的な熱機関を考える。熱機関$${^{*3}}$$とは高温の熱源から熱をもらって仕事をして余った熱を低温の熱源に放出する機関である。熱を完全に仕事に変換出来るので熱は余らない。従って低温の熱源に熱がないので、その温度は0度となる。これが温度の原点であり、基準である。基準が決まれば、高温側の「温度」を一点決めてやると単位が決められる。
この高温側の温度を水の三重点$${^{*4}}$$の温度として決めたのが現在の国際単位系における温度の定義である。三重点$${^{*5}}$$とは水蒸気と水と氷が同時に存在する温度のことで、単位の普遍性を求めた結果、この温度が選ばれたのであろう。水が氷になる温度は圧力によって変化するが、ある圧力でないと三重点にならないので温度は一点の値となる。
熱力学的温度の単位ケルビン(kelvin K)は水の三重点の熱力学温度の1/273.16である$${^{*6}}$$。
1/273.16というのはセルシウス温度(摂氏温度)と温度の目盛りを合わせるために定義した値で、必然的な値ではない。水の三重点の温度を「1」と決めても矛盾は出てこない。この定義によって水の三重点の温度は273.16K、セ氏で言えば0.01℃となった。これは光の速さ$${^{*7}}$$と同様、誤差というものがない。273.1599999~273.1600001Kに真の水の三重点の温度があるわけではなく、明確に273.16Kなのである。
これによって「温度が半分」と言う概念も判りやすくなった。温度計で定義していた時は、「半分の温度」というのは目盛りが半分と言うだけで物理的な意味が不明瞭であった。熱力学温度であれば熱機関で変換される仕事量が半分となる、という意味に置き換えられるので、物理的な意味が明瞭になる。温度の単位は明確に定義できたが、実用となると理想的な熱機関というのを実現させるのは大変難しい。そこで水の三重点以外にも定点温度$${^{*8}}$$を補助的に決める。これら定点温度の間を精密な温度計で目盛りを付けていくことにより温度の物差しが出来上がる。
結局は単位の定義だけ厳密に決めて、あとは従来からの温度計を使う$${^{*9}}$$しかないようだ。
*1 20010521 温度の単位(1)
*2 William Thomson (Lord Kelvin)
*3 第5回 熱力学第2法則
*4 龍王産業株式会社 水の話
*5 山里産業株式会社 水の三重点セル
*6 経済産業省 産業技術総合研究所 計量研究所 温度
*7 19991002 光の速度
*8 国際温度定点
*9 経済産業省 産業技術総合研究所 計量研究所 トレーサビリティ
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